ゾウ保護基金|絶滅の危機からゾウを守るために

ゾウの危機

現存するゾウは、アジアゾウElephas maximusとアフリカゾウLoxodonta africanaの2種です。中央アフリカに生息するマルミミゾウLoxodonata africana cyclotisはアフリカゾウの亜種(別種とするほどではないが相当の変異が見られる、種の地域的グループ)ですが、別種に分類されるべきだという主張もあります。

ゾウは、かつてアジアの南側全域に(アジアゾウ)、アフリカのサハラ砂漠以南に(アフリカゾウ。20世紀初頭)広く繁栄していました。ところが、今日の分布は中央アフリカと東アフリカ・南アフリカの一部を除くと、まるでかつての分布図の上に散らしたインクの染みのよう、という悲劇的な状況になってしまいました(分布図参照)。

ゾウの危機をもたらす原因のひとつは、人間の土地利用による生息地破壊です。

ゾウ本来の生息地である森林や草地が、水田や油やし(オイル・パーム)プランテーションなどの農地、入植者の集落、金属や石炭の採鉱場に転換され、あるいは道路、鉄道、パイプラインなどによってズタズタに分断されています。その結果、ゾウが使える場所と人間に改変されたりして使えない場所とがつぎはぎ(パッチワーク)のような状態になっています。

押し込められた狭い森林パッチのすぐ外側は農地であるため、栄養価の高い農作物に誘われて農地を襲うゾウも増えます。ときには村人に死傷者が出ることもあります。ゾウは村人の激しい怒りを買い、ゾウの保全に対する地域の理解は薄れます。報復的な密猟もひんぱんに起きます。

ゾウの危機をもたらす原因のもうひとつは、商業目的の密猟です。皮や肉も利用されますが、特に象牙は国際的なブラック・マーケットで高額に取引されています。特にアフリカゾウは、象牙目的の密猟が主な原因となって1980年代の10年間で134万頭から62万5000頭まで半減してしまいました。象牙目的の密猟、違法取引はその後も続き、近年かえって激しさを増しています。

国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストによると、現状のままでは、今後の100年間でアジアゾウが20%の確率、アフリカゾウが10%の確率で絶滅してしまうと予測されています。

ゾウの保全のためになされるべきこと

ゾウの生息地確保

ゾウの保全のためになされるべきことのひとつは、生息地の確保です。

ゾウの生存のためには、必要な生息環境(森林、草地、水辺など)が備わった広い生息地が連続している必要があります。ゾウの個体群(地域的なグループ)の長期にわたる生存を考えれば、数千平方キロメートル(東京都がおよそ2千平方キロメートル)以上の面積の土地が必要といわれています。生息地破壊がさらに悪化すれば、ゾウに未来はありません。

ゾウの生息地を確保するためには、広大な地域を対象にして、その中でゾウの生息地の確保と人間の土地利用を計画的に調整していく必要があります。ゾウの重要な生息地となっている区域はできるだけ多く保護区に指定した上で、内部の生息環境の悪化を防止する必要があります。しかし、ゾウは広大な生息地を必要とするので、すべてを保護区で囲うことは不可能です。保護区外となった生息地においても、ゾウを完全に排除するのではなく、土地利用を一定の限度にとどめて(たとえば本格的な森林伐採を行わない、高密度の集落を配置しないなど)共存をはかる必要があります。こうした調整に対する地元の理解を得るためにも、ゾウによる人身被害や農作物被害を予防するための普及活動などが重要となります。さらに、ある程度の広さのある生息地パッチ(保護区に指定されたものも含む)どうしを、人の占拠する土地を縫うようにしてつなげることも重要です。そうすれば、ゾウがより広い生息地を使うことができます。生息地パッチどうしを「渡り廊下」のようにつなぐ帯状の生息地を生物学的回廊=コリドーと呼んでいます。ゾウは距離を季節移動する動物なので、生息地パッチをコリドーでつなぐことは特に重要です。アジアゾウの実例では、コリドーの幅は0.5~1km、長さは5km未満がのぞましいとされています。あまり狭かったり、長すぎたりすると、人間の利用する土地に出てしまって農作物被害などが起きるリスクも増します。コリドー上の植生は、接続する生息地パッチと同じものであることが多いようです。

象牙目的の密猟・違法取引の撲滅

ゾウの保全のためになされるべきことのもうひとつは、象牙目的の密猟・違法取引の撲滅です。

そのためには、生息国における密猟の取締りと、生息国・消費国双方での違法取引の取締りが徹底されるようにすることが必要です。そのために、ワシントン条約(CITES)(⇒野生生物取引に関する調査研究)の実施のあり方が重要になります。また、象牙は国際的な商品です。象牙を求める主要な消費者が住むのはゾウの生息国ではなく、その外に存在する、経済的により発展した国々です。日本は中国とともにその筆頭です。消費国において、象牙の需要をなくしていくことが必要です。