「中国の迷信はトラの保護に対する最大の脅威」

ANI2009年11月11日

コルカタ:2010年寅年を祝う中国ではトラ製品の取引が激増すると考えられ、世界中の自然保護関係者の間では、この絶滅危惧種への新たな脅威が懸念されている。
中国の迷信はトラの密猟の主要原因の1つであり、その毛皮、骨、歯、爪などの需要は非常に高い。
寅年の2010年にはトラ製品は縁起ものとして需要が高まるのは必至である。

自然保護関係者はトラ製品の取引の全面的禁止を中国政府に要求している。「トラを年間のテーマに決めるだけというのは危険である。トラの保護と保全の啓蒙プログラムを政府は始めるべきだ。製品のためのトラの殺戮は全面的に禁止されなければならない。密猟が根絶しない限り、トラは絶滅危惧種のリストに留まるだろう」と、サンクチュアリ・アジア誌のメンバー、Suchanda Kunduは訴える。

 「トラの保護とその生息地区の保全の必要性について、地域住民の意識を高めることも重要である」と、西ベンガル森林保護局長のAtanu Kumar Rahaは指摘する。
 「トラの生息地では人間とトラのあつれきは避けられない。しかし、双方が相手の生息域を侵略しなければそのあつれきは最小限にとどめることができる」と付け加えた。

 西ベンガルではスンダバンス・デルタ地区に250から274頭、ブクサ・トラ保護地、マハナンダ野生生物サンクチュアリ、ジャルダパラ野生生物サンクチュアリなどの保護区にさらに45から50頭のトラがいる。
 Rahaによると、スンダバンスの生息地では200から250頭のトラを保全することが理想だという。しかし、北ベンガルの草原が茶畑に変貌し、草食動物は減少したため、トラの繁殖は低下した。
 その結果、ブクサ保護区やジャンダパラ国立公園のトラの数は激減した。

 一方、6000平方キロメートルに及ぶバングラディシュ側のスンダバンスでは、400頭いると、2003年インド・バングラデシュ合同トラ個体数調査は推定している。
 塩分が少ないバングラデシュ側の水質によりスンダリの森林が繁茂し、トラの個体数に貢献しているとRahaは指摘する。

 次のトラ個体数調査は2010年1月に予定されており、伝統的な痕跡法のほかトラの糞尿のDNA鑑定という新手法も組み合わせて実施される。
 4000平方キロメートル余りのインド側スンダバンス地域全体にわたり、大勢の人により、トラの糞が集められ, 監視用カメラの下におびきよせるための餌がおかれる。
 痕跡の確認、糞尿のDNA鑑定、自動撮影カメラの分析をすべて総合すると、かなり正確な個体数がわりだせるだろうとRahaは考えている。

 河口付近の村落にトラが出没し、家畜や人々を襲撃したという報告がいくつか届いている。
 しかし、こうした事件は今までにもあったが、通信手段の不備から報告されなかったのではとRahaは指摘する。道路、輸送、電子通信が改善した現在、デルタ地区からの情報が迅速に報告され、トラの襲撃が増加したかのような印章を与えているにすぎない。
 「しかし最も変化したのは、村落に迷いこんだトラが村民に殺されてしまう数である。野生生物局や複数のNGOがトラを殺さないよう働きかけてきたキャンペーンが村民に浸透してきている。現在では、森林局に直ちに連絡すれば、局員がかけつけてトラを捕獲し、プロジェクト・タイガーのコア地域内に無事解放してくれると村民は理解している」と、サンクチュアリ・アジア誌のメンバー、Joydeep Kunduは語る。

 Rahaによると、西ベンガル州政府がトラの保護に費やす年間支出額は7千万ルピー(1億3500万円、Rs1=¥1.92、2009/12/17)に対し、中央政府は西ベンガルのトラの保護に2千5百万(4,800万円)から3千万ルピー(5,800万円)の支出を認可している。しかし、トラの保護には生態系全体の支援、保全が必要である。

 スンダバンス地域の開発のための資金は日本の銀行に嘆願中である。森林地帯の外に住む住民の雇用体制を構築したいという考えである。
 「そうすれば、材木、薪、蜂蜜、魚釣りのために村民がコア地域に入ることがなくなり、人間と野生動物のあつれきが大幅に減少し、トラの生息環境の保全にも役立つだろう」とRahaは期待する。
 十分な雇用機会による地域の持続的開発、密猟に対する防衛手段、トラの保護の必要性に関する意識向上などが計画されている。
 スンダバンスはトラの個体数に限って言えば、現在飽和状態だとRahaは感じている。課題となるのは、いかに減少を防ぐことができるかということである。
(翻訳協力 石原洋子)

【JTEFコメント】
寅年に「野生のトラが絶滅しないように」という願いが日本では共有されていると思いますが、寅年だからラッキーチャームとしてトラを自分の体内に取り込みたい、幸運のお守りとして持ち歩きたい、という考えが多くの中国人にあるようです。生息地が減少しつづけ、周囲は村や道路などに変わり、行き場のなくなったトラが人と出会えば殺される…。人間だけが住む町があるように、トラにとっても人間が入ってこないコア地域が必要です。棲み分けができて初めて、トラとの共存ができるのです。