目覚めた中国、トラの保護を求める
インドが環境問題について中国と新たに連携したことで、トラ保護区にも影響が出ている。ベンガルトラへの新年の贈り物として示すかたちで、中国の国家森林局はトラの保護、とりわけトラの部位やそれを使用した製品の違法取引に対する対策強化の必要性を求める指令を出した。
中国からのトラの部位の需要が絶えないことで増加しているトラの密猟や密輸は、インドと中国の両国間における難題である。この保護問題の重大性から、インドのJairam Ramaesh環境相は昨年8月、中国を初めて訪問した。しかし、この際に行われた絶滅危惧種の保護に向けた両国の話し合いでは大きな進展は無かった。現在では、インド政府の取り組みの効果が現れている。
中国が出した指令は野生のトラの保護、トラの部位やそれを使用した製品の違法取引に対する法律の施行、そしてトラ飼育場の管理および監視の強化を目的としている。
しかし、トラファームの閉鎖の問題には口を閉ざしており、トラの保護に取り組むインドにとって今後も懸念材料となる。
また、違法密輸およびトラの部位やそれを使用した製品の違法取引への取り締まりも指示している。この指令の中で特に求められているのが、林務局が他の法執行機関と連携して監視を増やし、トラの取引に対する強制措置を取ることである。
表向きは、中国国内におけるトラの部位の取引は違法である。しかし、催淫性{さいいん せい}の薬や漢方薬の材料に用いられるトラの部位の需要は増え続けており、闇市場の活性化の要因となっている。このため、インド国外のネパールやミャンマーとの国境地帯では密猟や密輸が増加している。中国当局が最近出した指令には、トラの部位の需要を抑えることでこの問題に対処する狙いがある。
この指令では、トラの部位の消費量削減に向けた国民の意識や違法取引への国民の拒絶が促進されるよう求め、国民に野生生物犯罪を積極的に当局へ通報してもらうよう提言している。同時に、違法取引に対する国民の訴えに耳を傾けてこなかった当局は責任を取ることになる。
この指令では捕獲したトラの飼育施設の監視、管理の強化も求めている。
これを実施するには、飼育施設で飼われている全てのトラを追跡するためのデータベースをつくり、施設内でのトラの死亡に特に注意する必要がある。違法取引を防ぐため、貯蔵されているトラの体やその部位が使用されないよう封じておかなければならない。
収容能力のない飼育施設については、地方当局の監視の下で備蓄を処分する必要がある。どのトラファームにおいても、一般公開に先立って許可を有し諸条件を満たしておく必要がある。
中国には問題のトラファームが多数存在し、およそ4,000頭のトラが飼われている。観光客を引き付けるためにこのようなファームがつくられたと政府が主張する一方で、ファームは漢方薬に用いるトラの部位を得るために利用されていると専門家は主張している。Ramesh環境相は、トラファームを段階的に廃止してトラの部位の備蓄を処分するよう強く求めている。同氏は中国のZhou Shengian環境大臣に対し、人々がこの問題に敏感になりトラの部位の取引を行わなくなるよう中国が取り組む保証を求めている。
(翻訳協力 松村理沙)
【JTEFのコメント】
中国が本気でトラの保護に取り組むのなら、野生のトラへの影響があるトラ飼育施設場を閉鎖するべきだと思います。ワシントン条約会議でも飼育トラの部位の「国内」取引の再開を中国は示唆していました。いったん再開されてしまうと、野生のトラとの識別もできないので密猟は盛んになります。魚と同じく天然もの、つまり野生のトラの価値が上がるのは明らかです。