村人が口をすべらせ密売が発覚 運ばれたトラの死骸

AP通信 イタナガル 2010年1月24日

  map
 インド北東部アルナーチャル・プラデシュ州、西シアン県ヌムク(Numuk)で、村人がトラを殺し、南部に接するアッサム州の業者に毛皮を売りさばいたことが露呈したが、これは州をまたがって盛んに行われている密猟密売の一端にすぎないようだ。

 毛皮は隣接地域のアッサム州シラパサール(Silapathar)から来た業者に15万ルピー(295,267円、Rs1=\1.97 2010/03/09)で売られたもようだ。

 その目撃者のヌムクの住民、タパク・カトーによると、村の狩猟の際、若者たちが森の奥へ5kmも入り込み、1月15日にトラを目撃したという。

「ヌムク村の若者たちが猟銃を携えジャングルの奥へと入り、丘の上で何時間も獲物を待っていると、藪のそばにうずくまっているトラを見つけました。そこで3発打ち込んだのです。100キロ近くあったトラは傷を負いそこに倒れ、その場で死んだので、5人で飛び掛りその後運んできたのです。」と述べた。

 トラの肉は村の祭りで村人たちにふるまわれた。

 カトーによると、若者たちはグワハティの業者に交渉したが、5万ルピー(98,422円、Rs1=¥1.97 2010 /03/09)しか出さないと言うので断った。その後、シラパサールから業者が村に来て15万ルピー(295,267円、Rs1=\1.97 2010/03/09)で買っていったのである。シラパサールの業者は昨年も2度訪れ、近隣の2か所の村からトラ皮を買っていったが、村の狩猟のあとは大抵、鹿皮を買っていくのだとつけ加えた。

 本件は警察も地区政府も不意打ちをくらったようだ。

 西シアン県の警察長官、ツサール・タバ氏は知らなかったと弁明したが、地域内に密猟者がいることは否定していない。

「この数ヶ月休暇でいなかったので、この件については知りません。村民とアッサムからの密猟者との間に何らかの関係がある可能性は高いと思いますが」とアアロから電話で答えた。

 アルナーチャル・プラデシュ州チャンラン県と東カメン県にあるナムダーパ・トラ保護区と パッケ・トラ保護区はプロジェクト・タイガーの管轄に入ることになった。

 州の首相ドージー・カンドゥー氏は昨年10月に行われた森林環境省との会合で、密猟がはびこっていることに懸念を示していた。
(翻訳協力 石原洋子)

【JTEFのコメント】
 密猟組織と手を組んでいる村人の存在に気付いているものの、密猟防止対策が不十分だということです。密猟団は密猟しやすい守りの弱い地域を物色し狙いを定めてきます。中国へ近いことからも仲買人はこの地域を狙うのでしょう。この州は30もの少数民族が独特の文化を持って暮らしています。驚いたことに祭りにトラ肉がふるまわれたとあるのもその部族の慣習なのかもしれません。昨今チベットの伝統衣装に使われるため密猟されたトラの毛皮の多くがチベットに流れていることからも、チベットに近いこの地は密猟者の格好の餌食になりやすいのでしょう。しっかりしたパトロール活動で密猟を止めないと、この地からもトラが消え去ってしまうでしょう。