大メコン圏のトラ、10年間で70%以上の減少

ワシントンD.C.(Vocus/PRWEB) 2010年1月26日

残り350頭--原因は密猟、生息地の破壊と無思慮な開発
 インドシナトラは苦境にあり、今年の寅年のうちに思い切った対策をとる必要がある。さもないと、2022年の次の寅年までにはベトナム、ラオスとカンボジアのトラは絶滅しているかもしれない。

 今日発表された世界自然保護基金(WWF)の新しい報告書によると、大メコン圏では、10年少しの間にトラの個体数が70%以上も減少した。この地域に属する5つの国々に、合わせて350頭のトラしかいないのである。

「危機に瀕するトラ:大メコン圏の難題に立ち向かう(Tigers on the Brink: Facing up to the Challenge in the Greater Mekong)」は、タイのホアヒンで開催される第1回アジア・トラ保護関連省庁会議に向けてトラ生息国の各リーダーが準備を進めるのと時を同じくして発表された。この会議は、中国暦では2月14日に始まる寅年の1年間にわたって野生のトラを保護しようという試みの一環である。

「危機に瀕するトラ」によると、大メコン圏のトラの生息数は、前回の寅年(1998年)以来、推定1200頭から約350頭にまで急減した。大メコン圏にはカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイとベトナムが含まれる。

 この減少は世界全体の野生のトラ生息数にも反映されており、現在は過去最低の3200頭――前回の寅年の5000頭から7000頭という推定からここまで下がったのである。報告書の作成者は、中国伝統薬で使用されるトラの部位の需要増加と、無思慮な地域インフラ開発による生息地の分断化が相まって、インドシナトラの生息数の減少を招いたと述べている。

「インドシナトラは苦境にあり、今回の寅年のうちに思い切った対策をとる必要があります」と、WWFアメリカの種の保存プログラムの責任者、シビル・クレンゼンドーフ(Sybille Klenzendorf)氏はいう。「さもないと、2022年の次の寅年までには、ベトナム、ラオスとカンボジアのトラは絶滅しているかもしれません」

 かつて、インドシナトラはメコン川流域のいたるところで見られたものだった。今日では、カンボジアとラオス、ベトナムに、それぞれ30頭ずつしかいない。現在生息しているトラの多くは、タイとミャンマーの国境付近にあるカヤ、カレン、テナセリムの山中で見つかっている。

 しかし、こういった否定的な傾向はあるものの、大メコン圏のトラはまだ救うことができる。この地域には、合算すれば世界最大のトラ生息地が含まれているからだ。208,000平方マイル(約538,720平方キロ)--おおよそフランスと同じ大きさ--にわたる森林地帯が、現在のトラ保護活動の主要エリアとなっている。

「生息数の減少は心配ですが、この地域は、トラの個体数を復活させるうえで大きな可能性を秘めています」と、クレンゼンドーフ氏はいう。「ただしそれには、この地域全体が協力して思い切った対策をとり、今いるトラと生息地を保護することが不可欠です」

 ホアヒン会議で、WWFは、野生のトラの数を2022年までに今の2倍にするために、さらなる努力を払うようトラ生息国の大臣たちに呼び掛けることにしている。ここでいうトラ生息国とは、バングラデシュ、ブータン、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、ロシア、タイとベトナムの13カ国のことである。

 1月27日から30日まで開催されるホアヒン省庁会議は、トラの未来を確かなものにするための世界的な政治過程の一環だ。これらの努力は、今年9月にロシアのウラジオストックで開かれるトラサミットで頂点を極める。このサミットは、ロシアのウラジミール・プーチン(Vladimir Putin)首相が主宰し、世界銀行総裁のロバート・ゾーリック(Robert oellick)氏が共同司会を務める。

「トラはメコン川流域のシンボルともいうべき種であり、寅年という特別な年が、トラに流れを引き寄せるためにまたとない機会を提供するのです」と、WWFアメリカのメコンプログラムの責任者、デキラ・チャンギャルパ(Dekila Chungyalpa)氏は述べた。「私たちはこの機会を逃さずつかみ取り、トラの部位の取引と横行する密猟を根絶しなければなりません。同時に、トラが必要とするだけの生息地の確保も必要です」
(翻訳協力 木田直子)

【JTEFのコメント】
 インドシナトラは残存する5亜種の中でも個体数は多く発表されているのですが、開発途上にある様々な国に分散して生息しているため、生息地の激減から絶滅の危険性が非常に高いです。また国境沿いにはブラックマーケットが存在しいまだに堂々と身体各部や製品が販売されています。目先の利益ではなく、自然がなくなった後に人間生活に降りかかる影響など将来を見据えた各国の協力体制が早急に必要です。