インド、トラ保護のための新しいシステムを発表

 AFP:ニューデリー 2010年4月15日

 トラの数の激減の原因である密猟を食い止めようと苦心する中、インドは水曜日、「怠惰な」野生生物保護官を厳しく取り締まるため、新しいトラ追跡システムを使用すると発表した。

 インド国内における絶滅に瀕したトラの数は、1,350頭にまで落ち込んだ。これは2002年の推定生存数3,700頭のおよそ3分の1である。
「現地の保護官の多くは、ひどく怠惰で」担当する野生生物保護区の巡回という職務を果たしていないと、ジェイラム・ラメシュ(Jairam Ramesh)環境・森林大臣は新しい追跡システムの使用を発表した際、ニューデリーのリポーターに語った。

「彼らは現地の調査をする代わりに、データを作り上げているのです。」ラメシュ大臣はこのように述べ、追跡ソフトウェアを使えばこのような不正行為を防げると付け加えた。

 M-STRIPESと呼ばれるこのソフトウェアは、トラに発信機付きラジオをつけて、移動するトラの動きを追跡するものでGPRS(ゼネラルパケットラジオサービス)と利用する。

 ラメシュ大臣によると、保護区を巡回する森林官がトラの頭数について不正確な報告をし、密猟者からのトラの保護に関する効率の悪さを隠ぺいしていることも多いという。

 マンモハン・シン首相はトラの数の減少に危機感を持ち、2008年、警察や環境団体、税関から専門家を呼び寄せ、密猟の終息を目指して「野生生物犯罪規制局」を開設した。政府は元兵士にも、国立の保護区において「トラ保護活動」の一端を担うよう協力を求めた。

 しかしこれらの新しい活動にも関わらず、インド野生生物保護協会(WPSI)によると、2009年には密猟者により32頭のトラが殺され、今年に入ってからは3頭が殺された。専門家によると、インドとネパールの間の抜け穴だらけの国境が密猟者の密輸ルートとして使われ、森林に住む人々に賄賂を渡して密林の道案内をさせているという。

 トラの狩猟は世界中で違法行為とされており、トラの体の部分の売買はインドを含め167カ国(訳注:175カ国の誤り)に拘束力のあるワシントン条約で禁止されている。しかし中国、タイ、ミャンマーや他のアジアの国々ではトラの皮、爪、骨が伝統的な薬として珍重されており、需要があるのだと環境保護関係者たちは語る。

 ラメシュ大臣は、新たなトラ個体数調査報告を11月に発表すると述べた。
(翻訳協力 加藤哲子)

【JTEFのコメント】
インドのトラ個体数の減少は、生息地の減少といまだに続く激しい密猟です。すべてのトラに発信機をつけることは不可能でしょうが、今後このシステムを具体的にどのように密猟対策と結び付けていくのか注目したいと思います。