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現在の法律では不正な象牙が出回ることを防げない-種の保存法の抜本的な改正を-

象牙組合重鎮の会社による不正象牙の大量取引


2011年、日本最大の象牙印章製造販売会社タカイチ(大阪市天王寺区)が、法律上義務づけられている登録のない象牙(全形を保持したもの)を古物商らから大量に買い入れていた事件で有罪判決を受けました。
タカイチ社が2005-2010年に5ルートから買い入れて印章に加工、市場に出回らせたと考えられる無登録象牙の量は、どのくらいの規模だったのでしょうか。印章製造に用いられた象牙(本数)
JTEFの推定によれば、572~1,622本(5トン~15トン)もの量にのぼりました。これは、ゾウ300頭から900頭分に当たります。これは、同じ期間に、正規に登録され、印章製造に消費されたと考えられる象牙の31~87%(本数比)もの量です。
また、この象牙の量を印章の本数に換算すると、多ければ47万3千本(年平均9万4千本)になります。年間10万本近い象牙印章が、不正な象牙から製造され、市場を流通していたことになります。
象牙を取るために殺されたゾウと象牙印章

営業はそのまま継続。 行政は「法令上の根拠がないため」何もできず


タカイチ社に対して、行政による「指示」「業務停止命令」は一切ありませんでした。営業はこれまでどおり継続されています。その理由は、「法令上の根拠がないため、そのような不利益処分を課すことはできない。」というものでした。
JTEF申入れに対する環境省及び経産省共同回答

雨後の竹の子のように湧いて出る? 日本に眠る出所のわからない無登録象牙


タカイチ事件は、登録されずに所持されている象牙在庫が違法取引の巨大な温床になっている事実を明らかにしました。
押収された違法象牙 象牙の国際取引禁止から23年。「本当に」禁止前から所持されている象牙が日本にどのくらいあるのか? 行政も業界も事実をまったく把握していません。

「グレー」を「白」に。ロンダリングも横行


問題は、その「温床」から「裏」の流通が生じているというだけではありません。「裏」から「表」への象牙の流入、つまり無登録象牙のロンダリングも横行しています。
タカイチ社は、無登録象牙に登録済牙の登録番号を記載したガムテープを貼り付け、登録済であるように装っていました。登録された牙の登録票を、無登録象牙のために流用していた可能性も疑われます。

象牙の国内流通管理は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)によって行われています。
今こそ、抜本的改正を!


  • 象牙取引業(特定国際種事業)を登録制とし、無登録象牙の譲渡を含め違反のあった業者の登録申請は拒否、登録後に違反をした業者は登録を取り消せるようにすること。
     こうすることで、象牙の違法取引にかかわる業者が営業できないようにするべきです。
  • 登録なく所持されている象牙の届出制度をつくり、国内で所持されている象牙を網羅的に把握すること。
     こうすることで、不正な象牙流通の温床を小さくしていくことができます。
  • 正規の登録象牙から製造された製品について環境省が認定し、認定シールを発行する制度がありますが、認定シールが不正象牙から製造された製品のために利用されないよう、シールだけを販売すること等を禁止すること。

  • ゾウ(田中光常)
    写真:田中光常

    「種の保存法」の改正案が、今国会(第183回通常国会)に政府から提出される見通しです。
    しかし、主務官庁の環境省が考えているのは、罰則の引上げ以外には目玉のない「小さな」改正です。
    このままでは、象牙の違法取引事件で示された「種の保存法」の弱点については、まったく手をつけられないおそれがあります。
    トラ・ゾウ保護基金は、多くのNGOと協力して、「種の保存法」の抜本改正を求めていきます。

    報告書「象牙印章流通の裏側-日本における象牙の国内流通管理と『種の保存法』の問題点」はこちら