ブログ:「竹富町観光案内人条例(案)」策定過程の問題点とこれから

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 JTEF/JTEF西表島支部やまねこパトロールは9月17日に意見書「竹富町観光案内人条例(案)を慎重に検討するべき3つの理由」を竹富町長、竹富町議会、および竹富町世界遺産推進室あてに提出しました。意見書の具体的な内容についてはリンクから直接確認して頂きたいのですが、今回は意見書提出にまで至ったこれまでの観光案内人条例(案)策定までの経緯について振り返ってみたいと思います。

 竹富町観光案内人条例(案)策定の出発点となった西表島のガイド制度をつくるという話は、世界自然遺産リストへの記載登録推薦にともない始まった「沖縄県エコツーリズム推進体制構築事業」のWGが立ち上がったころから盛り上がり始めました。しかし、2020年の遺産登録のタイムリミットが迫るなかで、内容についての具体的な議論が始まらなかったため、2018年5月にJTEF/JTEF西表島支部やまねこパトロールは条例の素案を作成し、参考にされたいとして竹富町政策推進課自然保護係(現竹富町世界遺産推進室)に提出しました。検討が遺産登録後にずれ込んだ場合、新規参入者増加などの理由で事業者間の合意形成が困難になり、ひいては西表島の自然保護政策の大きなマイナスとなると判断したためです。竹富町はその提案を了承し素案をもとに条例検討「準備会」を開催、 条例策定上の論点を検討しました。その後、竹富町からJTEF/やまパトに対して案内人条例は西表島エコツーリズム協会を事務局とする町の検討会を立上げ、そこで正式に検討するという連絡がありました( 検討会は2019年5月に設置 )。それから、 JTEF/やまパトは案内人条例の検討過程には関わっていません。ただし、検討会が非公開にされると聞いたので、それに対しては公開の場での公平公正な議論を要請しています。しかしその後、条例についての意見聴収は観光事業者のみから行われ、さらにそれら関係者、関係行政機関および島外有識者のみで構成された検討会は非公開で開催され、島民は全く条例の情報にアクセスできなくなりました。JTEF/やまパトは都度、公開の場で議論する必要性を訴えてきましたが、3度開催された検討会はついに公開されることはありませんでした。

 条例の概要が初めて住民の前に示されたのは2019年8月28日に開催された世界自然遺産地域連絡協議会西表島部会でのことでした。しかしその概要の中では、JTEF/やまパトがその素案提案の中で最重要ポイントとしていた自然環境の過剰利用防止の観点が不明確となり、その一方で、ガイド専業以外の西表島島民を、曖昧な基準で広く規制対象としかねない制度の骨格が描かれていました。また、竹富町からは、公平性が求められる免許の交付基準についても、行政の裁量で調整可能という説明がなされました。そして、9月9日に離島振興総合センター、翌10日に中野わいわいホールで開催された、本条例「初」の住民説明会の席で、9月6日にすでに議会上程されていることが明かになります。しかも、10日の午前中にはすでに審議が終了していました。したがって、西部地区での住民説明会はすでに議論の余地がない決定事項を伝える場となっていました。当然、参加住民からは「住民説明会前に上程という進め方はおかしいのではないか」という抗議の声が上がり、町に対する条文公開の要求(私は東部説明会で要求)も出ましたが、拒否されました。

 観光案内人条例(案)は、その性質上、多くの島民がその直接的な規制の対象となりうる条例です。それにも関わらず、本条例検討会が非公開で開催され、議会上程後に住民説明会を開催、さらにはその住民説明会の場で、主権者であり規制の当事者である島民への条文の公開が拒否されるというのは、あまりに非民主的と言わざるをえません。本条例は9月20日の本会議にて採決される予定となっていますが、 条例が成立した場合は、その施行のための細則として定められる「施行規則」(議会にはかからず、町長が定める)が、どのようなプロセスで定められ、どのような内容となるかがとても重要になります。その中で、我々がどのような義務を負うのか具体的に定められるからです。

 2017年に沖縄県によって行われた住民アンケートで、世界自然遺産を大変望ましい、あるいは望ましいと答えた人は、30%にも満たなかった西表島。関係行政機関は都度住民の理解を求めていくと説明していますが、これまでの数々の会議、検討会の議論の経過やその実態はどうだったでしょうか。今回の条例制定検討会に限らず、インフラについての重要な会議や、観光管理の背骨ともなるマスタープラン作成の会議(西表島拠点整備構想検討会、持続的な西表島のための来訪者管理計画検討会)などが非公開で開催され、地域別行動計画策定の場である西表島部会ですら地域住民との直接的な意見交換を行わないままです。私は島の自然保護に関わるものとして、また一人の島民として、これからも行われていくであろう数々の世界遺産、自然保護関連の会議が、その当事者である西表島島民に広く開かれたものになる事を切に願っています。

JTEF西表島支部やまねこパトロール
事務局長 高山雄介

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