プレスリリース:原材料を密輸に頼る日本の国内べっ甲市場が、タイマイの絶滅リスクをさらに高める
https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/210630Bekko.jpg 240 237 Japan Tiger Elephant Organization Japan Tiger Elephant Organization https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2021/06/210630Bekko.jpg東京 – 2021年6月30日
トラ・ゾウ保護基金(JTEF)は本日、報告書「永続する日本のべっ甲細工の闇」を公表した。
タイマイ(Eretmochelys imbricata)は、地球上に生息するウミガメ類7種の一つで、国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、「絶滅のおそれが極度に高い種」(CR)に選定されている。この状況を招いた主な理由の一つが、かつて世界最大の輸入国であった日本で「べっ甲細工」とよばれる工芸品の原材料とされる、甲(甲羅。べっ甲とも呼ばれる。)を商業取引するための密漁である。
タイマイは、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約)の附属書Iに掲載され、その国際商業取引が禁止されている。日本も、1992年を最後に輸入を行っていない。そのため、合法的に輸入されたべっ甲在庫は遠くない将来に枯渇し、その時点で日本のべっ甲産業の命運は尽きると考えられていた。
「ヤフオク!におけるべっ甲細工に販売状況を調査すると、2018年と2019年の2年間で1万8千~3万件の落札があり、その落札総額は2億2千万~3億2千万円に達していました。その一方、国に報告されるべっ甲業者らの在庫もいつまでもなくなりません。報告する業者の数も、この20年以上大きく変化していません。これはおかしいと思いました。」とNPO法人トラ・ゾウ保護基金 事務局長の坂元雅行は語る。「国内のべっ甲在庫が増えるとすれば、その入手源は、事実上密輸品に限られるはずだからです。」
本日午後1時30分、東京地方裁判所で、2019年に起きたべっ甲の密輸未遂事件(関税法違反)について共犯者である2名の被告人に対して判決が言い渡された。べっ甲製造販売業者に対しては執行猶予付の懲役1年8月および罰金120万円、輸入禁止前には貿易商として業界団体のために合法的に輸入を代行していた、20数年来の密輸ブローカーに対しては執行猶予付の懲役1年4月および罰金80万円だった。密輸が試みられたべっ甲約7kgは没収された。
トラ・ゾウ保護基金は、この事件を含め、過去にタイマイの甲の密輸入で告発された計10件の刑事事件と、税関データの分析により、過去密輸べっ甲がいつ頃、どのようなスケールでべっ甲業者の在庫に流入したのか、密輸へのべっ甲業者自身のかかわりはどのようなものだったのかを調査した。「1994年から2006年までの期間を中心に、継続して相当量の密輸べっ甲が水際を突破し、税関で差し止められるものをはるかに超える量が国内在庫に入り込んでいたことは疑い余地がありません」と坂元は述べる。「しかも、密輸の発生と日本の国内べっ甲市場・業界との深いつながりも明らかになりました。べっ甲在庫がいつまでたっても無くならない理由は、密輸入されたべっ甲が、業者らの在庫に積み増されたためだったわけです」とJTEF事務局長坂元雅行は続ける。
この様な中で、近年、タイマイの甲の輸入差止めがほぼ10年ぶりに多発の傾向にある。相当量の密輸品で補充されたとはいえ、じりじりと減少する「合法」在庫の補充を渇望するべっ甲業界の置かれた厳しい現状がそこに見て取れる。タイマイの甲の密輸リスクは明らかに高まっており、日本の国内べっ甲市場がこの傾向を引き起こしていることは明白である。このまま事態を放置すれば、絶滅のおそれが極度に高いタイマイの生存に対する脅威はさらに高まるであろう。
日本政府がとるべき対策について、坂元は次のように断言する。「国内べっ甲市場は、未だにべっ甲細工に対する高い需要によって維持されつつ、その生産に不可欠な原材料を調達するには犯罪によるしかないという異常な状態にあります。このような市場は、可能な限り早期に、計画的に閉鎖しなければなりません」。