イリオモテヤマネコー危機と保全の動きの今_2024

2023年3月に琉球大学より提出された「令和4年度 イリオモテヤマネコ個体識別等調査業務」報告書に盛り込まれていた、2022年度に行われた西表島沿岸低地部29ヶ所での定住個体のモニタリング結果が公表されました。高那~野原地域での牧場開発の影響も心配されましたが、今年度も全ての地区でイリオモテヤマネコの生息が確認され、個体識別に基づき、オス33個体、メス11個体、性別不明個体1個体が確認されました。昨年度の39個体から6個体減少していますが、行動圏における個体の入れ替わりも順調に行われていると考えられており、現在は大きな問題は生じていないと考えられます。

2023年3月7日に石垣島自然保護官事務所で開催された令和4年度イリオモテヤマネコ保護増殖検討会で2022年のイリオモテヤマネコの目撃情報が発表されました。2022年に環境省西表野生生物保護センターに寄せられたイリオモテヤマネコの目撃情報は404件となっており、前年と比べて81件(17%)減少しました。特に目撃情報が多く寄せられたのは古見~美原地区で、全目撃情報の23%を占めています。これまでの目撃情報の収集は、主に目撃者からの電話やメールでの報告に依存しており、さらに環境省西表野生生物保護センターで一元的に管理されていましたが、2022年からは沖縄県が開発した目撃情報入力システムが導入され、西表野生生物保護センターのHPから入力された目撃情報を保護増殖事業に関わるメンバー(行政機関や研究者だけでなく、やまねこパトロールなどのNGO)がリアルタイムで回覧できる状態になりました。そのため、夜間パトロールや草刈りなどの保全活動もスピード感も上がっています。

2023年に確認されたイリオモテヤマネコの交通事故は0件となりました!古見~美原間や、野原~高那間では路上に頻出する個体の目撃が続く時期ありましたが、緊急のパトロールや、道路に直接立っての注意喚起を行い、無事故に抑えることが出来ました。ただし、報告されていないだけで事故が起きていた可能性もありますし、過去のデータを見ると件数が少なかった翌年や翌々年には大きく増えています。2020年も確認された件数はゼロでしたが、翌2021年は5件報告されています。油断はできません。