ゾウー危機と保全の動きの今_2024

IUCNアフリカゾウ専門家グループによれば、熱帯アフリカの森林に生息するマルミミゾウの個体数(2022年時点)は、2023年の推定で13万5000頭(132,968~140,849頭)とされました。生息域は計947,200㎢(日本の2.5倍)で、かつての面積の25%に過ぎません。2016年から2023年7月までに22の地域個体群が絶滅していることがわかっています。

2015年時点でのサバンナゾウとマルミミゾウを合わせた個体数は41万5000頭と推定されていました。サバンナゾウだけの新しい個体数推定(2022年時点)は未だ発表されていません。アフリカサバンナゾウの現在の生息域は、地域によって差異はありますが、農耕が始まる以前(サハラ砂漠より南では2000年前)の15%に過ぎないと考えられています。2016年から2023年7月までに4つの地域個体群が絶滅していることがわかっています。

ワシントン条約のゾウ密猟モニタリングによると、2018~2022年の5年間で、発見されたゾウの死体における密猟死の割合は、大陸レベルで明らかに減少傾向にあります。2018年の54%から2022年の33%へ)。2022年の割合は2003年以来の低さとなりました。これはとても喜ばしい傾向です。生息地での密猟防止努力の他、世界各国で国内象牙市場が閉鎖されたことの影響がありそうです。この傾向を続かせるうえで、世界で無二の合法象牙市場を開き続ける日本の姿勢が問われます。

ワシントン条約のゾウ取引情報システムに報告された、2022年における世界の象牙押収件数・重量は、2021年よりも少なくなっています。しかし、報告義務を果たしていない国が少なくないことから、未だ減少傾向を語ることはできないとされています。

各生息国から報告されたアジアゾウの個体数を、2018年と2022年とで比較したのが下表です。

南インドでは、バングラデシュで30%ほどの減少傾向がみられるものの、全体的に安定しています(ネパールではかえって増加)。一方、東南アジアでは、インドネシア(ほとんどがスマトラ島に生息)では30~50%、ラオスでは30~40%、マレーシア・サバ州(ボルネオ島)では25~50%、ミャンマーでも25~50%の減少がみられます。この「減少」は2018年時点の見積もりが甘すぎたための見かけ上のものであり、実際にそれだけの個体数減があったわけではないとも考えられます。しかし、仮にわずか4年の間にそのような数字に迫るゾウの減少が起きていたとすると、まさに危機的というほかありません。また、この期間では減少していないとはいうものの、100頭を超える程度のベトナムをはじめ、ネパール、中国、カンボジア、ブータンの個体群は1,000頭に満たず、国レベルでの存続が危ぶまれる状況が続いています。