ブログ:TOKYO象牙パラドックス – 取引規制の改革を約束する一方で取引促進🎥(動画あり)
https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2024/08/tokyo-tower-1007x1024.jpg 1007 1024 Japan Tiger Elephant Organization Japan Tiger Elephant Organization https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2024/08/tokyo-tower-1007x1024.jpg坂元雅行 トラ・ゾウ保護基金 事務局長 & エイミー・ゼツ・クローク Environmental Investigation Agency 上級マネージャー
日本では、東京都の象牙取引政策がパラドックスの渦中にある。小池百合子都政は、一方では象牙の違法輸出を防止するために都内における取引規制を改革すると約束しつつ、その一方で象牙需要を高め、象牙の国際取引再開に向けた活動を強化するための補助金を提供してきた。東京都の指導者は、実際のところどちらを向いているのか?
動画(日本語字幕):TOKYO象牙パラドックス – 取引規制の改革を約束する一方で取引促進
アフリカでは、象牙取引に供される牙のためにゾウが密猟され続ける中、今日の日本は世界最後の主要な合法象牙市場として、国際社会から孤立した存在となっている。そして、その市場の大部分が東京に集中するのである。近年、元環境大臣であり、自ら環境主義者をもって任じる小池知事とその都政は、問題のある東京の象牙取引について一定の指導力を発揮し、東京が違法な象牙取引へ寄与しないようにするための方法を見出そうとした。しかし、東京都は同時に、都内の主要な象牙業界団体に対し、象牙の国際取引再開の口火を切ることを目的とする事業や象牙製品に対する国内需要を高める事業、要するに象牙取引を盛り立てる事業のための補助金を毎年のように支出してきたのである。
小池都政の第2期は、新型コロナウイルス感染拡大と2020年東京オリンピック・パラリンピックへの対応をもって語られる。この五輪を開催するに先立ち、小池知事は東京における象牙取引および、それがもたらす違法輸出の可能性に関する国際的な懸念に対処したいと考えていた。そこで、2020年1月、知事は、自ら設置した有識者会議の下で象牙取引規制の評価を開始し、2年後、有識者会議は、一部の文化的または芸術的価値のある品目を例外としつつ象牙市場を閉鎖するための法的措置の検討を含む東京都に対する提言を公表した。
トラ・ゾウ保護基金およびEnvironmental Investigation Agency (EIA)は、小池知事が象牙取引問題について日本におけるリーダーシップをとったことを称賛し、とりわけ有識者会議が検討を提言している、市場を閉鎖する都条例を定めることによって、象牙の国内取引を制限し、取引がもたらす違法輸出のおそれを抑制することを再三にわたって求めてきた。確かに、小池知事による象牙取引規制の検証および有識者会議提言の実施に向けたコミットメントという成果は、東京都の象牙取引に対する方針が国の方針よりも進歩的であることを示している。しかし、小池知事は日本政府にさらなる象牙取引の規制を要求する一方で、自ら設置した有識者会議から具体的な提言を受けているにもかかわらず、都政下では意味のある行動をとっていない。有識者会議提言を含む小池知事による象牙取引規制に対する検証のフォローアップの現状は、控えめに言っても失望を買うものとなっている。
東京都による失敗は、その背景に、小池知事の手が実際には届かない縦割り行政がもたらす要因、すなわち別の競合する政策が存在するのではないか。私たちにそう思わせるようになっていた。そこで「古い」象牙取引政策に改めて目を向けたところ、東京都は象牙業界に対して多年にわたって補助金を継続していただけでなく、最近になっても象牙需要を高め、または将来的な象牙の国際取引再開の機運を高める活動を支援する目的で支給されていたことを目の当たりにしたのである。この1990年代からの長きにわたる東京の象牙産業に対する補助金は、1989年の象牙の国際的な商業取引禁止によって加工原材料の入手が途絶えたことに端を発して開始されたものである。今日では、象牙の国際取引禁止を強化してゾウを保護すべく、世界のほとんどの国内市場が閉鎖されている。日本政府ですら、象牙産業に対する補助金を終了する中、何ゆえ東京都ではこれが続けられているのか、疑問は尽きない。
2024年6月11日、私たちは、小池都知事と都政に対し、補助金を主題にした書簡と意見書を送り、いくつかの提言を行った。国際的観点から見ると、象牙工芸品・製品に対する需要を拡大することは、ワシントン条約の象牙取引に関する決議に違反する。また、象牙の国際取引再開を模索し、その口火を切らんとする行為は、象牙取引をめぐる国際情勢に対する認識を欠くものである。一方、東京都目線で見ると、東京都は都民の支払った税金を、2つの対照的な、互いに矛盾さえする行政サービスに使ってきたことになる。一つは象牙取引を増強するためのもの、もう一つは象牙需要を低減し合法的な象牙取引の範囲を制限しようとするものである。このことは、東京都政における部局間の風通しの悪さを示している。私たちは、提言に対する回答を、都知事選に先立つ2024年6月28日までに求めていたが、東京都からJTEFの坂元に対し、期限には間に合わない旨の事前の連絡があった。
7月7日の都知事選における小池知事勝利の後、私たちは東京都に対し、象牙取引政策改革の方針を継続するよう求めた。一方、私たちが明らかにした東京都の象牙に関する政策の一貫性のなさは、東京都内部の構造的問題および組織内の意思疎通上の問題を示唆している。小池都政の第3期においては、国際的な野生生物保全への取組みと歩調を合わせ、時代遅れの補助金を廃止するとともに、有識者会議による提言の完全実施、特に都内の象牙市場を閉鎖する条例を検討することによって、矛盾を解消するべきである。私たちは、引き続き、希望をもって小池知事とその都政へ働きかけていく。
国際社会の大部分では、象牙の合法取引は象牙目的の密猟を伴ってゾウを脅かし、ゾウの保全との間で軋轢を引き起こすと認識されている。東京都は、象牙需要を促進し、国際象牙取引を推進する事業のための補助金を廃止することによって、自らの真の立場を明らかにするとともに、象牙取引によってもたらされる脅威からゾウを保護することに向かって、国際社会とともに力強く前進する機会に接しているのである。日本による象牙取引を終焉させるため、東京にはもっとできること、もっとやらなければならないことがある。