ブログ:100万都市ボパール郊外で起きた人と「アーバン・タイガー」とのコンフリクト。地域コミュニティからボランティアを募って、トラの動きと事件発生を監視
https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2024/06/5ce1dbf4c94dc92fe146360bd8777688.jpg 349 353 Japan Tiger Elephant Organization Japan Tiger Elephant Organization https://www.jtef.jp/wp/wp-content/uploads/2024/06/5ce1dbf4c94dc92fe146360bd8777688.jpgマドヤプラデーシュ州の州都である100万都市ボパールの郊外は、ラタパニ野生生物保護区に隣接しています。2022年のインド政府によるトラの個体数調査によれば、ボパール~ラタパニ野生生物保護区~ケオニ野生生物保護区と連なるランドスケープ(複数のタイプの群集―ある地域内で相互作用に結ばれて生活する生物種のすべてを含む空間―には、96頭のトラの成獣が生息していると推定されています。繁殖している成獣のトラ、亜成獣のトラ、仔トラを含め、人間とかかわりを持つことを避けるために分散して暮らし、報復を避けつつ家畜を獲物にしてきました。しかし、ボパール市公団による都市周辺の開発計画が、トラと人間との接点を拡大し、コンフリクトを不可避にするようになりました。2023年10月には、1頭のトラがモーラナ・アザド国立工業大学のキャンパスに侵入するに至ります。このトラは、地域の保護活動家スリバスターバ氏に居場所が突き止められ、森林局の手で捕獲され、サトプラ トラ保護区に放たれました。
ボパール~ラタパニ~ケオニと連なるランドスケープとサトプラ トラ保護区
スリバスターバ氏は、再発を防止するため、ボパール森林管理区を通じてWTIに「緊急行動プログラム」(RAP)支援を要請しました。このRAPは、ボパール市周辺でボランティアを募って訓練し、ネットワーク化、トラの動きを監視し、記録してもらうことを狙いとしています。さらに、ボランティア・ネットワークのメンバーは、人の住居のある場所、そのそばにトラがやってきたことの緊急警報システムとしての役割も果たします。
このRAPは、2023年9月、スリバスターバ氏が主導して、ボパール森林管理区の担当者ら立会いのもと10名のボランティアが参加して開始されました。その後、新たに5名が参加しています。この人たちの出自は、フリーの研究者、日雇い労働者、村の一般住民と様々ですが、トラの保全への関心のもとに一致団結して活動に当たりました。ボランティアたちは、毎日、ボパール市内を含む3つのエリアを監視します。トラ出没の痕跡を探し、自動撮影カメラを移動路に使っている可能性がある場所にしかけ、(トラが訪れるであろう)水場の様子を監視します。また、ボパール森林管理区の監視員と協力して、コンフリクトの未然防止に努め、地域住民へのトラ保全と被害防止に関する普及啓発を行っています。ボランティアたちはこれまで知られていなかった3頭のトラ(オス1頭、メス1頭)を新たに発見してもいます。同じ場所で、新たに生まれた仔トラも見つかりました。
亜成獣の仔を連れている負傷したメストラが自動撮影カメラにとらえられた。
このRAPは、地域コミュニティを動員したプログラムが、トラとのコンフリクトの防止とその保全に果たす役割に希望を持たせるものとなりました。