プレスリリース:国内象牙市場の規制でいかに日本が立ち遅れているか 翌週のワシントン条約常設委員会で明らかに

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東京(2022年2月28日)–絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の第74回条約常設委員会(SC74)が、来週3月7~11日、フランスのリヨンで開催され、「国内象牙市場の閉鎖」が議題にのぼる。その議案書には、オーストラリア、EU, 香港、イスラエル、日本、ニュージーランド、南アフリカ、タイ、英国およびジンバブエの10か国/地域が提出した「国内象牙市場が密猟または違法取引の一因とならないためにどのような措置を採っているか」に関する報告書が添付されている。そのうち、ゾウが生息しない国(つまり、国内象牙市場が輸入に依存している国)で未だ市場閉鎖のための立法がなされていないのは、オーストラリア、日本、ニュージーランドの3つである。

とりわけ日本は、市場閉鎖法制化の方向に進んでいるオーストラリアおよびニュージーランドと異なり、合法化された国内象牙市場を維持する意思を明確にしている。その市場規模は著しく、登録全形牙および登録事業者から報告された66トンの計244トンだけでも、2021年2月28日時点でワシントン条約事務局に報告されている象牙在庫のうち、アジア地域275.3トンの89%、全世界796トンの31%を占める。

日本政府は、「日本は、その国内象牙市場が密猟または違法取引の一因とならないために厳重な措置を実施してきた」と主張している。しかし、本日JTEFが発表した新しい報告書「日本の象牙市場は衰えを知らず–厳しい規制に煩わされることのない取引業者の別天地–」は、そのような措置が実行されてきたとは到底言えないことを明らかにしている。

  • 日本政府は、象牙を取り扱う事業者は登録されなければならず、登録及びその更新申請は厳格に審査されていると主張する。しかし、市場のメイン・プレイヤーに対する事業の更新申請に際し、近年の違法な象牙取引歴がある問題業者を排除することすらできなかったように、登録審査は名ばかりである。  
  • 日本政府は、登録事業者には全形牙の全数登録が義務づけられていると主張する。しかし、登録事業者らは在庫を分割することによって、全形牙の全数登録の義務づけを逃れており、この規制強化は意味をなさなかった。
  • 日本政府は、カット・ピースのトレーサビリティは確保されていると主張する。しかし、カット・ピースおよび象牙製品については、そもそもその出所や取得の合法性が公的に確認されないことになっている以上、どのような仕組みを導入したところでトレーサビリティ確保は不可能である。
  • 日本政府は、放射性炭素による年代測定結果の提出を求めることにより全形牙登録の審査を厳格化したと主張する。しかし、年代測定の活用の仕方を誤っているうえに、登録審査の厳格化を意図的に先延ばしにしたため、出所と取得時期が不明な全形牙が大量に合法化され、市場を流通する結果を招いてしまった。その後になって登録審査を厳格化しても後の祭りである。

国際社会が懸念しているのは、日本の合法象牙市場が、違法に輸入される象牙の隠れ蓑となることに加え、違法輸出される象牙の巨大な供給源になっていることである。例えば、Environmental Investigation Agency(EIA)が調査したところ、2018年1月から2020年12 月までに日本由来の象牙が中国を主とする外国で押収された件数は、少なくとも76にのぼった。象牙業者らは、国内取引の規制を、形式的には難なく遵守しつつ、売れたものが輸出されていくことを前提とした巧妙な象牙ビジネスをこの市場に定着させている。

日本政府が効果的な国内象牙市場の規制を長年怠り続けた結果、出所と取得時期が不明な牙に由来するあらゆる象牙が大量に流通する、オープンな合法市場が成立した。この依然活況を呈する合法市場は、違法に輸入される象牙の「隠れ蓑」として、また国外へ違法に輸出される象牙の供給源として絶好の存在である。日本のとり得る選択肢は、この市場を閉鎖することしかない。