プレスリリース:「日本が象牙の販売、取引を禁止する時がついに来た」

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米国クリントン、ベイカー両元国務長官が合法象牙市場閉鎖を小池都知事に要求

―オリンピックを前に設立された都の有識者会議は進行が停滞

―市場の維持は、SDGs推進、テロ対策、国際金融ハブを目指す都や国の方針と逆行

2021年7月29日

ヒューメイン・ソサイエティ・インターナショナル(HSI)

認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金(JTEF)

アメリカ合衆国のヒラリー・クリントン元国務長官とジェイムズ・ベイカー元国務長官は東京都および日本の合法象牙市場の閉鎖を求め、東京都の小池百合子知事に公式書簡を提出しました。ヒューメイン・ソサイエティ・インターナショナル(本部:ワシントンD.C.、CEO:キティ・ブロック)と認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金(本部:東京都港区、理事長:戸川久美)は、これに対して心からの謝意と支持を表明します。加えて、アメリカ動物園水族館協会、センター・フォー・バイオロジカル・ダイバーシティ、デビッド・シェパード野生生物基金、エンバイロメンタル・インベスティゲーション・エージェンシー、フランツ・ウェーバー基金、天然資源防護協議会、セーブ・ジ ・エレファント、ワイルドエイド、ワイルドライフ・ダイレクトなども、賛成の声を重ねています。

書簡は、7月8日付けで東京都政策企画局を通じて知事に送付され、また要望の内容をまとめた論評記事が、7月26日にワシントン・ポスト(The Washington Post)に投稿されました。両元国務長官は、それぞれのツイッターでも記事を共有しており、クリントン氏の投稿は、7月29日現在で5.3万件以上の反響を受けています。

ジェイムズ・ベイカー氏はジョージ・H・W・ブッシュ元大統領、クリントン氏はバラク・オバマ元大統領のもとでそれぞれ国務長官を務め、数十年にわたりゾウの保護活動に携わってきました。ベイカー氏は、1989年のアメリカの象牙輸入の全面禁止を主導し、同年の「ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」(以下「CITES」)締約国会議における、象牙の国際取引全面禁止決議に多大な貢献をしました。クリントン氏は、テロリズムや国際組織犯罪への対策を強めるオバマ政権下で、野生生物の違法取引対策に向けた国家戦略の策定に貢献し、米国政府内にタスクフォースとアドバイザー委員会を立ち上げたことで知られています。政権を離れたあとも、クリントン・グローバル・イニシアティブの活動として、ゾウの保護のためのパートナーシップを立ち上げています。

小池知事宛の書簡およびワシントン・ポスト(The Washington Post)の論評記事で両元国務長官は、それまで取引量の多かったアメリカ、イギリス、中華人民共和国、台湾、香港、シンガポールなどの国と地域が2010年代に象牙市場を閉鎖したことを受け、日本が世界最大の合法象牙市場となったこと、国内規制は行われているものの、国際条約CITESの規定に見合わない内容となっており、抜け穴が存在することを指摘しています。2018年1月から2020年の12月にかけ、日本から海外への違法輸出の試みが少なくとも76件押収されており、日本の不十分な国内規制が、象牙の違法な国際取引や、ゾウの密猟につながっている可能性を示唆しています。

野生生物の違法取引は、密猟による種の保存への影響に加え、国際犯罪組織やテロ集団の資金源にもなることが知られており、国や都が推進する国際連合の「持続可能な開発目標」(以下、「SDGs」)の推進や、東京オリンピックが掲げる国際平和と協力の理念と逆行するものです。世界の大手銀行44行は、イギリスのウィリアム王子が指揮する王室財団金融タスクフォースに対し、野生生物の違法取引による利益を取引しないという宣誓を行っています。東京都は、アジア地域における金融取引のハブを目指していますが、象牙の合法市場を維持することは、こうした都の目標を阻害することにもなりかねません。

東京都は2020年1月、小池都知事の強いリーダーシップのもとで、オリンピック開催に向けて、「象牙取引規制に関する有識者会議」を設置しました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響や、オリンピックの開催縮小を受け、会議の進行には陰りもみられます。ベイカー氏とクリントン氏は書簡の中で、上述の通り象牙の合法市場維持に関わる様々な問題点を指摘し、また小池都知事の取り組みを高く評価したうえで、オリンピック開催国・都市として、東京都および日本における象牙市場閉鎖を強く求めています。ヒューメイン・ソサイエティ・インターナショナルと認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金は、両元国務長官の要望を強く支持するとともに、東京都と日本政府に、種の保存および国際平和・安全の確保に責任を持つ国際社会の一員として、勇気ある決断と行動を求めます。

両元国務長官の略歴

ジェイムズ・ベイカー(James A. Baker III)

1975年から米国政府での公務を開始。ロナルド・レーガン政権で、1981年から85年大統領首席補佐官、85年から99年第67代財務長官を務める。ジョージ・H・W・ブッシュ政権下では、1989年から92年アメリカ合衆国第61代国務長官、92年から93年大統領首席補佐官を務め、冷戦終了後の外交・政治問題に精力的に取り組む。1991年の大統領自由勲章、母校プリンストン大学のウッドロー・ウィルソン賞を始め、アメリカ国内での公務での実績に対する受賞経歴多数。国際的にも、コフィ・アナン事務総長下での西サハラ紛争への個人使節などを歴任。現在はベイカー・ボッツ法律事務所のシニア・パートナー。

ヒラリー・クリントン(Hillary Rodham Clinton) 

イェール法科大学院を卒業後、弁護士や大学教員として、教育格差や医療制度の問題に精力的に取り組む。1993年から2001年まで、ビル・クリントンのファースト・レディとして、特に貧困家庭の子どもの医療アクセス向上などに努める。2001年にはニューヨーク州の上院議員として初当選を果たし、2006年に再選され2009年まで歴任。2009年から13年には、バラク・オバマ政権下で第67代国務長官を務めた。2016年、米国の大統領選挙初の女性候補として、民主党のより出馬し、ドナルド・トランプ元大統領に敗れるも、6600万票を獲得。

ヒューメイン・ソサイエティ・インターナショナルHumane Society International)について

Humane Society Internationalは、アメリカ最大の動物保護団体であるThe Humane Society of the United Statesのグローバル部門。50か国以上で、野生生物の保護、動物と人間の良好な関係の推進、犬や猫の保護・救援、家畜の福祉改善、動物実験を使用しない研究、災害下での動物の救援など、動物に対する残虐行為の解消のため幅広く取り組んでいる。詳細はhttps://www.hsi.org/から。

認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金について

認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金(JTEF)は、野生の生きものの立場に立ってその世界を守り、それを通じて生物多様性を保全するとともに人間の自然環境を守ることをめざして設立された非営利、非政府の団体である。JTEFは日本がかかわる野生生物犯罪を撲滅し、また非持続的な野生生物取引を消滅させるために、野生動物市場を調査し、法制度の分析を行い、法執行機関および目標を共有する世界と日本の組織と協力する。詳細はwww.jtef.jpから。

書簡に対する支持表明団体一覧

動物園水族館協会(Association of Zoos & Aquariums

センター・フォー・バイオロジカル・ダイバーシティ(Center for Biological Diversity

デビッド・シェパード野生生物基金(David Shepherd Wildlife Foundation

エンバイロメンタル・インベスティゲーション・エージェンシー(Environmental Investigation Agency

フランツ・ウェーバー基金(Foundation Franz Weber

天然資源防護協議会(NRDC

セーブ・ジ ・エレファント(Save The Elephant

ワイルドエイド(– WildAid

ワイルドライフ・ダイレクト(Wildlife Direct