明けましておめでとうございます 寅年2022が始まりました              

627 418 Japan Tiger Elephant Organization

  • 前回の寅年:13カ国に3200頭のトラが生息 さて、今年は?

アジアにしか生息していない野生のトラ。前回の寅年(2010年)には13カ国に3200頭が暮らしていました。地球上に3200頭のみ!それも13カ国のトラが暮らす野生動物保護区はそれぞれ点在しています。柵の無い保護区を一歩出れば周辺は村や農地で大勢の人間が暮らしています。安全な保護区はまるで孤島。

肉食動物のトラは生きていくために、自分の体重の約5分の1(オスで30-60㎏、メスで20-30㎏)の肉が必要です。1頭のトラに年間約50-60頭の中型のシカやイノシシが必要ですが、獲物である草食動物のいる森は、100年でトラがいると分かっていた場所の94%が消失、さらに2006年には、残った6%の42%が失われ、現在も減少が続いています。

スマトラトラのいるインドネシアやマレートラのいるマレーシアではトラが生息している多様な森がアブラヤシのプランテーションに転換され喪失しています。

  • 今、繁殖できるトラの生息国は8カ国のみ!

生息地の激減で、現在はトラの生息が確認されている国は11か国になってしまいました。バングラデシュ、ブータン、中国(極めて少ない)、インド、インドネシア、タイ、ネパール、マレーシア、ミャンマー、ラオス(極めて少ない)、ロシアです。

インド、ネパール、ロシアでは、トラの保護活動が功を奏し、前回の寅年より個体数の増加が見込まれています。

一方、カンボジア、ベトナム、中国(南部のアモイトラ)は野生下ではほぼ絶滅したと言われています。

トラの生存を脅かすものは、生息地の減少と分断化、毛皮や骨目当ての密猟です。虎骨を使った漢方薬(錠剤、薬用酒など)にうたわれている効能に科学的根拠は認められていませんが、それを欲しがる人がいるというのは、トラの強いイメージから自分の体に取り入れたいという欲求があるからでしょうか。

  • 世界のトラ個体数の半数以上がいるインド

インドはトラ保護活動に熱心です。特に、私たちが協働パートナーであるインドのNGO,インド野生生物トラストWTI(Wildlife Trust of India)と共に活動している中央インド、マハラシュトラ州やマディアプラデシュ州は、トラの生息数も多く、保護区周辺の森を人間活動禁止の保護区に組み入れるよう州政府に提言し、保護区が拡大されました。同時に、トラが行き来に使っている森(コリドー)に暮らす人々が森へ過度に負荷をかけないためのプロジェクトを行ってきました。 

しかし、トラは単独生活者でそれぞれが縄張りを持つため、独り立ちした若いトラが保護区内に自分の縄張りをもてず、保護区を出て新しい縄張りを探さなければなりません。

  • コリドーの重要性

今まで育った保護区以外の場所(別の保護区など)に新しいなわばりを持つことで新しい出会いがあり、繁殖が可能になります。そこで、新しい保護区まで安全に行くために途中の森、コリドー(回廊)が重要なのです。このコリドーとなる森は法的に保護されていない土地であることが多く、人間活動に規制がありません。ここに、道路が出来たり、村人たちが過度に森を伐採したりすると、森自体が減少し、草食動物も消え失せ、トラが移動できなくなります。

このコリドーを通って行き来できる、ある程度の数のトラからなる個体群が成立していないと、近親交配でこの地域のトラの遺伝的多様性は失われてしまいます。さらに、密猟や災害、疫病が流行ると、一気にこの地域のトラは全滅してしまいます。

コリドーがあるおかげで、他の個体群との遺伝子交換が可能となり、十分な個体数の維持に繋がるのです。

  • トラの明るい未来には、今いる個体数ではなく、将来的に維持できる個体群が いるかどうかが重要。 つまり、コリドーを守ることが重要になります。

そのためにJTEFが何をしているか、次回のブログでお話します。

(C)Snehaa WTI