野生生物保全についての考え方

なぜ野生生物を保全するのか?

コラム:進化の歴史
―生物多様性は、さまざまな生きもののはたらきによって、長い時間をかけて作り上げられた。その最終章で私たち人間は生まれた。―

 地球は46億年の歴史を持っています。それを46冊の本に書いたとしてみると、1冊が1億年にあたります。1冊が400頁とすると、人間が登場したのは、最後の46冊目の最後から20頁、5000年前にさかのぼる古代文明の幕開けは最後の頁の最後の1行に過ぎません。


1冊目:

 46億年前、岩、氷、ちり、ガスが集まって地球が誕生しました。最初の地球は、5,000度もの温度でどろどろに溶けた状態でした。


7冊目:40億年前

 40億年前、地球が十分に冷えて、海と大気ができました。しかし、大気は酸素を含んでいません。この頃、微小な生命体が誕生したと考えられています。酸素もない過酷な環境の中で生きられる生物だったのです。


12冊目~22冊目:35億年前~25億年前

 藍藻(らんそう)という細菌の仲間は、一部の温暖な浅い海にマットのように広がり、二酸化炭素、水、太陽光を利用して増えていきました。そのときに、酸素が大気中にはき出されていきました。25億年前頃には、このような光合成を行う細菌のはたらきで酸素が大量に作られるようになりました。


41冊目の半ば:カンブリア紀(5億4000万年前)

 さまざまな海の動物が爆発的に現れます。しかし、自ら炭水化物を作る生産者はごく小さなプランクトンが中心で、生物の世界はまだ単純でした。また、陸上にはまだ生物は住んでいませんでした。


42冊目:オルドビス紀(4億9500万年前)、シルル紀(4億4300万年)、デボン紀(4億1700万年前)

 最初の魚類が登場しました。この魚はあごがなく、プランクトンやそのしがいを食べていました。その後、プランクトン以外の大きな動物を食べる魚が登場し、複雑な食う、食われるの関係ができあがっていきます。
オルドビス紀には、1回目の野生生物の大絶滅が起こります。様々な種類の三葉虫が絶滅しました。
 デボン紀は、魚類の時代ともいわれます。2回目の大絶滅が起こり、カッチュウ魚(鎧をまとったような形をした魚のグループ)や三葉虫の多くの仲間が絶滅しました。
 シルル紀には、最初の陸上植物が現れました。


43冊目の半ば:石炭紀(3億5400年前)

 地球上の陸地に大森林がひろがりました(この時期の植物の化石が最初の石炭です)。植物の光合成の働きで、大気中の酸素の量が急に増えました。そのため、昆虫やクモの仲間が種類を増し、それを食べる両生類(カエルやサンショウウオの仲間)が登場、陸上を歩くようになりました。陸上でも、生物間に食う、食われるの関係ができました。


44冊目の後半:ペルル期末(2億4800万円前)、三畳期末(2億600万年前)

 ペルル期末には、3回目の大絶滅が起きました。海だけでなく陸でも起きた大絶滅です。95%以上の動物種、多くの樹木が失われ、三葉虫はついにすべての種が消滅しました。
 三畳期末には、4回目の大絶滅が起き、多くのは虫類と海生の軟体動物(現存するものではカイ、イカ、タコの仲間)が大量に絶滅しました。


46冊目の前半:白亜紀末(6500万年前)

 陸上にさまざまな植物食、動物食の恐竜がさかえました。空を飛ぶ翼竜、水中の首長竜・魚竜もさかえていました。陸上の風景は、自然な森や水辺が残されている現代の風景と同じようになりました。 しかし、6500万年前の白亜期末、5回目の大絶滅が起き、恐竜は姿を消してしまいます。


46冊目の半ばから終わりまで:新生代第3紀(●年前)

 新生代という哺乳類の時代に入ります。植物や昆虫は前の時代とあまりちがいません。カメ・トカゲ・ワニ・ヘビの仲間を残して、爬虫類はいなくなりました。かわって、鳥類と哺乳類が急速に増えます。水中の世界では大多数の魚が現在のような形になっていきます。


46冊目の最後から20頁目:新生代第4紀(●400万年前)

 この時代の主役は、現在生きている動植物の直接の祖先となりました。ヒトの直系の祖先であるアウストラロピテクスも登場しました。この時代の終わり近くになって、2つの大きな事件が起こりました。ひとつは、現在のゾウやサイよりも大きい多数の大型動物の大半は姿を消してしまったこと。もうひとつは、それらの絶滅の原因ではないかと考えられているヒト(ホモサピエンス)の登場です。


46冊目の最終頁、最後行:1万年前

 人間の農耕文化が始まり、約5000年前に古代文明がおこります。こうして生物の世界は人類の時代へと移りました。そして現在、自然な進化のプロセスとは異質な、人間の手による6回目の大絶滅が進行しています。

(坂元雅行)


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