ゾウのニュース & JTEFのコメント
象牙の違法取引が増加
最近、大規模な象牙の押収が相次いで行われていることから、アフリカの象牙原産国とアジアの国内マーケットとを繋ぐ組織化された犯罪シンジケートの違法な象牙取引への関与が増えていることが示唆される。
ゾウ取引情報システムETIS (Elephant Trade Information System)による押収データの最新の分析によると、2004年以降増加し続けてきた象牙の違法取引量が、2009年に急激に増加した。 ETISは、ワシントン条約(CITES)が導入した2つのゾウ監視システムのひとつで、TRAFFICによって運用されており、ゾウ製品の押収記録について世界最大量のデータを収蔵している。
ワシントン条約第15回締約国会議(CoP15 )に先立ち、1989年以降85の国と地域で押収されたゾウ製品の記録14,364件の分析が行われたが、記録数は前回の2007年より約2000件増えた。
2009年の著しい増加は、大規模な象牙の押収が相次いで行われたことを反映するもので、アフリカの象牙原産国とアジアの国内マーケットとを繋ぐ組織化された犯罪シンジケートの関与が増えていることを示唆している。ETISのデータは、そのような犯罪シンジケートがこの10年で、より強大になり、一層活発に活動していることを示している。
アジア、アフリカの大規模な国内象牙マーケットと法律の執行の弱さとのあいだには、非常に強い相関関係が常に存在していることから、違法な象牙取引は、通常、法律の執行が緩く、マーケットの動きが法規制によってほとんど妨げられないような場所を通って、最終目的地へ流れていくことが示唆される。
ETISの最新の分析から、2004年以降徐々に増加していた象牙の違法取引が、2009年に急激に増加していることがわかる。実際、アフリカやアジアのこの様な無規制で違法な象牙の国内市場を封じるための主要な手段として、CITESの「アフリカの象牙取引を規制するための行動計画」があるのだが、象牙違法取引の増加は、この行動計画の実施が過去5年間になんら有効な変化をもたらすことができなかったということを示している。
ETISの分析により、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、タイの3カ国が、世界的規模の象牙違法取引に最も深く関与している国と特定された。これら3国に関する違法取引は、2002年の初回の検証の時点から重点注意対象として繰り返し指摘されてきたのだが、これらの国々は現在もなお、集散地、象牙の供給元、消費地として違法取引の主要な多発地域となっている。さらに、アフリカではカメルーン、ガボン、モザンビーク、アジアでは香港特別行政区、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、ヴェトナムの9つの国と地域も、象牙違法取引の重要な中心地であると特定された。
中国は、日本と並んで、CITESが認可した2008年の1回限りの合法的象牙取引の相手国として認められたが、現在アフリカに拠点を置く中国人によって絶え間なく引き起こされる違法取引という難題に直面している。現在、存在する証拠から、違法象牙の買付けに海外の中国人が広くかかわっていることが明らかになっており、この問題には、海外在住の中国人社会に対する積極的な支援活動や啓蒙活動を通じて真剣に取り組む必要がある。
1999年と2008年にCITESが認可した1回限りの象牙取引の影響については、分析結果からあまり明確になっていない。 1999年6月の第1回合法象牙取引に続く5年間に、違法象牙取引は徐々に減少し、この1回の取引によって世界的に違法象牙取引が増加したことを示す証拠は全くみられなかった。
2008年の終わりに実施された2回目の合法取引以降については、取引が需要の増加を刺激したのか、それまでの4年間に既に進行していた供給増加と時期が重なっただけなのかは、分析結果からはっきりしない。長期間にわたってより多くのデータを集めることで、この肝心な点をさらに明らかにすることができるであろう。
ETISの報告の全文(E15-44.01A、PDF 300KB)はCITESのウェブサイトからダウンロードできる。
(翻訳協力 松崎由美子)
日々世界をめぐる象牙押収のニュースは、最近の急激な象牙密輸の増加を既に確信させるに足るものでした。今回のTRAFFICによるETIS報告書は、2003~2004年頃から2007年にかけて再びゆっくりと増加、その後2009年現在まで急激な増加を見せていると分析しています。
さらに重要なのは、この密輸急増が、2008年11月に認められた、南部アフリカ4カ国から日本と中国への101トン象牙の正規輸出直後に始まったとの懸念が示された点です。
ETIS報告書では、1994~1995年から1998年頃にかけて象牙密輸が増加したとしながら、それが1997年に決定され1999年に実施された日本の50トン象牙の正規輸入とは関係がないと言い切っています。
JTEFとしてはこの分析に対して大いに疑問をもっています。他方、今2008年の正規輸入とその直後の密輸急増の関連も断定はしていませんが、可能性は示唆しています。このETISレポートの内容が、3月のCoP15で議論される、タンザニア約90トン、ザンビア約2トンの象牙輸出提案の結論に影響することは必至でしょう。
日本は、依然として象牙の輸入大国です。JTEFはインドやケニアにおけるゾウの生息地保全に貢献するとともに、もはや象牙製品を使う時代ではないと訴えて行きます。