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ケニア、象牙取引の件でタンザニアと対立

WANGUI MAINA、2010年01月05日

 ケニアは、3月に予定されている野生生物保護に関する国際会議(ワシントン条約締約国会議)で、象牙取引全面禁止のための運動を起こすであろう。というのは密猟により、ゾウが絶滅の危険にさらされたままだからである。 このケニアの態度は、保護対策に資金を提供するために、山積みになっている在庫象牙の販売を許可してもらい新しい取引の機会を広げようとしているタンザニアを怒らせることになりそうである。タンザニア、ザンビアと団結する国々は、タンザニアと同様の提案をしているザンビア、過去象牙取引再開の利に浴したボツワナ、ナンビア、南アフリカ、そしてジンバブエだが、この4カ国は今回、目立った動きをしていない。

 1980年代に指摘されたアフリカゾウを救済するための運動以来、ケニアは(象牙取引の)全面禁止の呼びかけの中心的な役割を果たしてきた。そしてナイロビ国立公園で何百万シリング(数百万円)もの価値のある山積みの象牙の在庫を燃やすことでケニアの意識を見せつけた。

 カタールで開かれる会議は、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の第15回目の締約国会議である。「我々は、絶滅の危険にさらされた種、とりわけアフリカゾウやサイのいかなる取引にも反対する。」と、ケニア野生生物公社(KWS)の局長ジュリウス・キプング・エチックは述べた。 KWSの局長は、小さな風穴をあけることはその地域の密猟を増やすことにつながりかねないと述べた。しかし、ケニアが依然断固として2007年に課された(象牙取引の)禁止(訳注)を解除することに反対するであろうというのに対し、ザンビアとタンザニアは、アフリカゾウとサイを保護するために提起された1989年の象牙取引の禁止に対し、取引再開を要請してきた。

訳注:2007年にボツナワ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエの4カ国に対して計102トンの在庫象牙を、1回限り輸出することが認められた。しかし、その輸出があった後9年間、それら4カ国がCITESで取引再開提案することが禁止された。しかしケニアは、そのような象牙の販売に隙を与えることは、市場の欲求をそそり、その地域において密猟が増え続けることになるだけだと主張している。

 ノア・ウェクサ野生生物大臣は、両国はアンボセリ国立公園とキリマンジャロ山国立公園のように、国境を挟んで国立公園区域を分け合う関係であるにもかかわらず、タンザニアはケニアと協議をしていないと最近述べた。 最近、ヨーロッパ(の動物園)よりサイ4頭を受け入れた際、野生生物大臣は、生態系が似ているので、ケニアはより多くのサイやゾウを密猟者に奪われることになりそうである、と述べた。

 既にケニアは、ゾウやサイの密猟活動が増えたのを目撃している。ゾウの密猟は2007年には47頭だったのに比較して、2008年には145頭に増えた。2009年にはケニアは200頭以上のゾウを失った。 ケニアは、ゾウの個体数が密猟活動のために1969年の168,000頭から1989年には16,000頭にまで減少したが、象牙取引禁止以来、なんとか35,000頭にまでゾウの個体数を増加させることに成功した経験を持つ。一方、サイの個体数は1989年には400頭だったのに比較して、ちょうど600頭を超えたところである。

 タンザニアとザンビアは、2009年11月にアフリカゾウをワシントン条約附属書ⅠからⅡへ格下げする提案を提出した。両国とも、押収された象牙や原産国の不明なものは除き、在庫象牙の1回限りの販売を主張している。(象牙)取引による純益は、地域開発とともにゾウと村落のためにのみ使われている。 タンザニアは89,848キロの象牙在庫を販売することを要望しており、一方ザンビアは未加工のゾウ皮とともに21,692キロの象牙の販売を希望している。 この提案は、コンゴ、ガーナ、リベリア、マリ、ルワンダ、そしてシエラ・レオネと同様にケニアから反対されている。

 現在の見解の相違は、2007年6月に開催された前回のワシントン条約会議中にたたかわされたと同様の議論を反映している。その際、南アフリカ、ジンバブエ、ナンビア、そしてボツワナといった南部アフリカ諸国は、象牙取引再開を要望した。 CITESの締約国会議に参加した国々は、妥協案として、中国や日本のバイヤーに計102トンの象牙を1回限り販売する機会を得た。

 2008年においてケニアのゾウが著しく減少したことは、ケニア野生生物公社によれば、南アフリカ諸国によってなされた1回限りの象牙の販売が原因だということである。 ケニアは、象牙取引の禁止撤廃に反対している諸国と協調して、再び象牙販売の機会を広げれば、そして市場で販売されている全ての象牙を逐一特定するためにDNA検査を行って、適正に原産国を特定しなければ、象牙需要が増加するばかりになるであろうと述べている。
(翻訳協力 日原直子)

【JTEFのコメント】

 タンザニアもケニア同様、生きているゾウを見せることで収入を得る観光国でしたが、近年は貧困から犯罪が増加し治安の良い国とはいえなくなっています。ケニアとは国をまたいで共有している保護区があり、ゾウが行き来しています。タンザニアは在庫象牙の売買で得た利益をゾウの保護対策費にあてるという考えですが、取引をたとえ1回でも許可してしまうと何が起こるかは、南部アフリカの象牙取引を認めた後のゾウの密猟、象牙密輸の急増をみても明らかです。


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