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ムワングンガ大臣、象牙売却計画で苦境に

ThisDay記者、2010年03月23日

ムワングンガ氏:不用意な発言

 現在ドーハで開催されているワシントン条約締約国会議において、象牙取引禁止の解除を求めるタンザニアが提出した問題の議案をめぐって、シャムサ・ムワングンガ天然資源・観光大臣は、自然保護派から厳しく説明を求められることで苦境に立たされそうだ。 タンザニアとザンビアが提案している象牙取引に対する反対派は、ムワングンガ氏の発言に新たな希望を得て中傷まがいの批判を行った。というのも、象牙売上利益のうち自然保護に充てる分は一部だけであると、大臣が口を滑らせたからなのだが、では、残りは実際どれくらいなのか ― 大部分なのか、それをどうする予定なのかという疑問にはいまだ返答がない。

 ワシントン条約(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:CITES)への2国の申請に対する反対派は、ワシントン条約の締約国であるタンザニアとザンビアの2国は日常的に増加傾向にあるゾウの密猟に対して注意が足りないと、以前から申し立ててきた。

 反対派の指摘するところでは、南アフリカの4カ国が取引許可を勝ち取ったごく最近の例のように、象牙取引禁止が部分的にせよ解除されると直ちに、ケニアでは密猟警戒パトロールを強化したにもかかわらず、ゾウの密猟が2年間で4倍に増加したという。 さらに彼らは、少なくとも売上利益が全額、自然保護団体やその活動に役立てられることはないであろうと断言しており、自分たちの主張が今、タンザニアの大臣の不用意な発言によってはっきり確認できたと述べた。

 ドーハで3月13~25日に開催されているワシントン条約締約国会議において、反対派はムワングンガ氏のこの失言を楯に主張を強めるものと思われる。また、今後、他国の代表も、タンザニアが提案する象牙取引による売上利益の正確に何割が自然保護に充てられるのか、残りはどこに回されるのか、なぜ売上利益の全額が自然保護に充てられないのかについて、大臣に明確な説明を求める可能性がある。

 某代表が質問したように、『タンザニアの密猟の現状は一体どうなのか。また、政府の定義では密猟象牙は押収後に合法的な在庫象牙になるのか』などが問われる。 象牙取引反対の請願書には、東アフリカ諸国の有力者や世界的な自然保護関係者らから11,615名ほどの署名が得られている。

 野生生物を担当するケニアの環境大臣は、締約国会議に出席することができるよう、キバキ大統領が自国の閣僚に課した渡航禁止令の対象者から除外されている。

 ケニアは、アフリカ23カ国からなる反対派の先頭に立って、象牙取引禁止の解除にはいかなるものであれ反対するものと見られており、これを一部ではケニア対タンザニアの対決と呼んできた。

 しかし、自然保護や特にゾウの保護ということでは、異なる考え方のあいだで遥かに大きな争いが起こっており、ケニア対タンザニアの争いはその一部分にすぎない。  取引に反対する圧力団体の活動は既に最高潮に達しており、支援を求めて世界的大物選手らに働きかけ、その何人かと共にアメリカ合衆国やヨーロッパへのツアーを終えたところだ。一方、取引に賛成する団体は中国や日本などの国々の支援を強い後ろ盾にしている。

 ワシントン条約締約国会議が進むにつれ、議論がどう進展するのか、また、同条約事務局が在庫象牙の売却に偏向したと言われた過去の轍を踏むことなく、公平・公正を貫くことができるのかを見るのは興味深いとオブザーバー参加者らは語っている。

 ドーハでの締約国会議において各国の代表者は、他の提案に関する決定だけでなく、タンザニアとザンビアからの要請を認め2国のゾウの格付けを下げて在庫象牙の1回限りの取引を許可するか否かを決定するものと見られている。 しかし、科学者と自然保護関係者からなる国際チームによると、この様な取引を認めれば、象牙目的のゾウの虐殺がアフリカ全土で増加することになりかねないという。

 ワシントン条約は175の加盟国の政府間における国際的な取り決めである。その主たる目的は、野生動植物がその国際取引によって種の存続を脅かされないよう保証することである。

 取引される象牙は死んだゾウや合法的な動物管理計画に従って間引かれたゾウのものであるということになってはいるが、これらの売却申請を締約国会議は却下すべきであると科学者らは主張している。 彼らの主張によると、過去に同様な取引が行われた結果、ブラックマーケットで新たな象牙の需要が生じ、そこでは合法的なオークションで付いた値の10倍の価格で取引されたという。

 象牙の取引許可は密猟を引き起こし、20年前に世界的な象牙取引禁止が導入されて以降認められるアフリカゾウの頭数回復を逆行させる恐れがある。

 科学者らによれば、タンザニアとザンビアはアフリカの違法象牙の主要な供給国であり密売ルートにもなっており、この事実は、2002、2006、2009年に何トンもの密輸象牙が押収されていることからも明らかである。2002年と2006年に押収された象牙のDNA鑑定により、押収象牙の大半がこれら2国の象牙に由来することが突き止められた。

 この30年間にアフリカゾウは当初の数の35パーセントにまで減少しており、現在その個体数は50万頭を下回っている。
(翻訳協力 松崎由美子)

【JTEFのコメント】
 「野生動物を売ったお金で貧困を救う」というのが野生動物利用側の常套句となっていますが、実際現地の人にどれだけお金が回るのか疑問視されていました。今回のタンザニアの大臣の発言で、改めて現地の貧困や野生動物の保護に使われるのか、問題が浮き彫りになりました。日本は象牙取引再開に熱心ですが、今の日本の現状ではたとえ正規に輸入されたものがあっても密輸品と識別する方法が確立されていません。今の象牙管理のシステムは全く不十分です。開発が進むなか、需要があるため密猟も無くならず、気がついた時にはゾウが地球上から姿を消してしまっていたということにもなりかねません。


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