ゾウのニュース & JTEFのコメント
タイの不正取引の犠牲となるアフリカゾウ
タイによる不正取引の犠牲となるアフリカゾウ
2010年、バンコクのスワンナプーム国際空港の関税省では、没収した象牙を検査する税関職員の姿が見られた。2009年初頭から1,600本以上の象牙がタイ税関で押収されたことから見ると、800頭以上のゾウが貪欲な暗黒国際市場の食欲を満たすために屠殺されたのである。
2009年には、ケニア野生生物公社の職員が、ナイロビ国立公園で複数の象牙を検査している。象牙はジョモ・ケニヤッタ国際空港で発見されたもので、バンコクに輸送される予定だった。
AFP通信社によれば、長年にわたって東南アジアは、タイの違法取引商人を満足させるべく、たっぷりとゾウを提供してきたが、このアジアゾウという種をあまりに大量に殺してしまったので、密売人たちの目は略奪目的でアフリカに向かうこととなった。
2009年初頭から1,600本以上の象牙がタイ税関で押収されたことから見ると、800頭以上のゾウが貪欲な暗黒国際市場の食欲を満たすために屠殺されたのである。象牙不正取引のランク付けで、「タイはなおも、第一位を占めている。」と語るのは、野生生物の違法取引を監視する保護団体トラフィック東南アジア支部副リーダーのクリス・シェパード氏。
象牙の国際取引は1989年に禁止されたが、その押収は、過去5年間で劇的に増大してきた。専門家筋によれば、取引は、モザンビーク、タンザニア、あるいはケニアからの希少動物の密輸にしばしば関連した、組織ネットワークを経由しているという。
「あなたが装飾用の象牙を注文なさるなら、1頭のゾウが殺されます。あなたは、密猟を求めることになるのです。」と、自然資源・環境犯罪省の調査部長で中佐のアドタポン・スザイは語った。
輸入象牙のなかには、――そのなかにはゾウの血が付着したまま届いたものも時たまあるのだが――その行く先がタイ国の市場であるものもある。
タイ王国の「実業家あるいは政府の高級官僚」のなかのある者は、壁に巨大哺乳類の牙を掛けておくのを自分の権力の象徴として好むのです・・と、タイ王国税関調査局局長セリ ・タイジオングラは、この件について特に言い及んだ。観光客はまた、ナコン・サワン県北部に住む専門職人の彫刻した、宝石や小動物を、眺めて悦に入るのである。ナコン・サワンの職人は、これまで伝統的にタイ原産のゾウからの象牙彫刻に携わってきた。
タイ象牙彫刻の伝統は19世紀末、推定10万頭のゾウが同王国を歩き回っていた頃に始まる。それ以来、そのゾウ達の森林生息地は開拓され、ゾウのほとんどは密猟者に滅ぼされてしまった。現在、タイ原産のアジアゾウは1,000頭だけが生き残っていて、多くが観光業で働いている。そして、象牙密売人の目は、アジアゾウのアフリカにいる同類、アフリカゾウに向かい、アジアの多大な需要を満たしている。
地の利を得て、未加工のものであろうが彫刻したものであろうが、タイはその象牙のほとんどを、伝統的に粉末薬として用いられる中国と、日本に密輸出している。
現在、タイ原産のアジアゾウは1,000頭だけが生き残っていて、多くが観光業で働いている。そして、象牙密売人の目は、アジアゾウのアフリカにいる同類、アフリカゾウに向かい、アジアの多大な需要を満たしている。
批評家は、当局のより厳しい措置が必要であると、言う。
「われわれは、重大犯罪としての起訴は予定してはいないのです。」と述べるのは、国際刑事警察機構環境犯罪部アジア太平洋地域支部のジャスティン・ゴスリン氏。「押収するには、犯罪を訴追する手続が必要です。それも輸送業者、密猟者、そして消費者の犯罪を訴追するばかりでなく、不正取引を牛耳っている主要人物の犯罪を訴追することが必要なのです。」と、氏は付け加えた。
専門家筋は、正義が行われることに関し悲観的である。タイのバンコク当局と関連アフリカ当局とのコミュニケーションは欠落し、税関職員および警察官の訓練は不十分であるからである。「世界におけるこの地域での野生生物犯罪は、なおも優先事項とはみなされていないのです。」とシェファードは語る。
「金の動くところでの戦いは分が悪いのです。汚職に対し、やるべきことはまだたくさんあります。」と、専門家たちは語る。「これだけ膨大な量の密輸を行うには、この件にかかわる官僚の汚職がなくては成り立ちません。」ゴスリンは主張する。
地元の新聞は最近、税関倉庫から象牙の在庫品が消えた話を報道した。関連なしとは思えない出来事である。最も楽観的な者達でさえ、これが困難な戦いであると認めている。
2009年象牙押収額は、2億5,000万バーツ(7億1,000万円:2011年4月1日現在)にのぼる。こんなに儲かるのは、密売人が「たぶん作戦を変更しているのだろう。」とゴスリンは述べた。
「かかる作戦変更を予期して、最近バンコクにある空港で押収を行った税関職員達は、港湾での取締りを強化してきているのです。」と、セリ氏は語った。しかし、こうした取締り強化の維持は困難であると、氏は警告する。
「われわれはいつも、一歩出し抜かれているのです」と氏は語る。「たぶん、何歩も。」
(翻訳協力 蔦村的子)