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ゾウのニュース & JTEFのコメント

象牙の押収数が2011年には記録的数字になった

Joanna Zelman記者 Michelle Fau通信員による記事(AP通信社)、2012年1月

 ヨハネスブルグ発(AP通信)― 2011年は、ゾウにとって悲惨な年だった。おそらく、1989年にこの陸上で世界最大の動物を絶滅から救うために象牙売買が禁止されて以来の、最悪の年である。こう、12月22日木曜日に、野生生物取引監視ネットワークTRAFFIC(トラフィック)は述べた。

 象牙の大規模な押収が記録的数に上ったということは、少なくとも2,500頭の動物(ゾウ)の死を意味しているのであり、組織犯罪―特にアジア・シンジケートーがますます、不正象牙取引およびこの不正取引を満たすための密猟に関わってきていることを示すものだと、TRAFFICは語った。

 押収された象牙の中には、古くから貯蔵されていたものもある。ゾウは、数年前にすでに殺されていたのである。アフリカで、こうした象牙のために最近幾頭の象が命を奪われたのかどうかは、はっきりとはしないが、専門家は警戒している。TRAFFICのゾウ・サイ専門家であるトム・ミリケンは、希少な絶滅危惧種の動物を救うための戦いにおいて、犯罪者側が優位に立っているかもしれないと、考えている。

 「大規模な象牙の押収では、そのほとんどが逮捕に失敗していることから考えて、私は、犯罪者側が勝利を収めているのではと、危惧しています」ミリケンはAP通信にこう話した。

 こうした押収のほとんどの場合は、象牙がアフリカからアジアに密輸されるケースに関わっており、アジアでは勢力を増しつつある富裕階級がその象牙装飾品やサイの角への欲望を満足させてきた。サイの角は、科学者たちは医学的効能はないと証明したものの、伝統的な薬を作るのに使われている。

 「象牙取引やゾウ・サイの屠殺をエスカレートさせて盛んに行っているのは、アジアのシンジケートです。今や彼らはアフリカ社会に深く入り込んでいるのです。」ミリケンは電話インタビューに答えて、ジンバブエにある自分の基地から、こう伝えた。「アフリカ大陸の歴史上かつてなかったほど、多くのアジア人たちが、アフリカに来ています。この象牙取引増加は、その間接的な影響なのです。」

 統計がすべて完了したわけではまだありませんが、どれだけ多くの象牙が発見されずに目的地に密輸されてしまうかは、誰も言えないのです。でも、「はっきりしていることは、2011年に劇的に大規模押収数、つまり、重量にして800kg(1,760ポンド)以上のもののが増加していることです。」と、TRAFFICは、声明で述べている。

 今年に入って、少なくとも13件の大規模な押収があった。比較すれば、2010年の大規模押収件数は6件であり、しかもそれらの押収重量は計10トン未満にすぎなかった。

 一番最近の例でしかも最悪のケースでは、12月21日130万ドル(1億28万2千円:2012年2月1日レート、1ドル77.14円)相当のアフリカゾウの象牙数百本がカンボジアへ出荷されるのをマレーシア当局が押収した事例がある。この象牙は、ケニアのMombasa(モンバサ)港からの手工芸品のコンテナに隠されていた。ほとんどの大規模押収の出荷元は、ケニアかタンザニアの港であると、TRAFFICは語る。

 タンザニアのSelous Game Reserve(セルー動物保護区)では、ひと月に50頭のゾウが殺されている。象牙はたたき切られて切り離される。こう伝えるのは、ワシントンに拠点を置く環境調査エージェンシーEnvironmental Investigation Agency (EIA)。

 輸送量があまりに多いので、犯罪者たちは空輸の代わりに海路を使った出荷をし、役人に賄賂を使って手を借り文書の偽造をするようになった。

 ミリケンが述べるところによると、押収された象牙の中には、押収象牙や自然死したゾウの象牙から成る、政府の貯蔵していた象牙が流れてくるケースも確認されているそうである。汚職のもう一つの徴候である。

 「象牙押収のデータを集めて23年になりますが、・・・大規模な象牙の押収という点では、今年が最悪の年です。2011年はゾウにとって本当に恐ろしい年になりました。」とミリケンは述べた。

 サイも被害を受けている。南アフリカでは今年、記録的なことに443頭のサイが殺されたと、National Geographic News Watch(ナショナルジオグラフィックニュースワッチ)は伝える。

 この数は、去年殺されたサイの頭数333頭を上回っている。政府が今年、サイを守るために南アフリカで最大の国立公園であるKruger National Park(クルーガー国立公園)に兵を配備したのにもかかわらず、である。ここでは、244頭のサイが2011年に殺された。National Geographic(ナショナルジオグラフィック)は今週、そう報告した。

 この数字は年末前にさらに上昇すると予想される。クルーガーには、1万頭以上のシロサイ と約500頭のクロサイがいる。南アフリカはアフリカ大陸に残存するサイの90%の故郷である。

 アフリカゾウの頭数は、ヨーロッパによるアフリカ植民地化に伴って精力的な白人ハンター達がアフリカ大陸にやって来る前までは、500万頭から1,000万頭はいたと推定される 1980年代の象牙取引のため、大量の密猟が行われたので、残存していたアフリカゾウの数は半減し、約60万頭まで減った。
 
  1989年の象牙取引が禁止され、この動物(ゾウ)を保護しようという国際的な努力が一斉に行われたあと、東アフリカと南部アフリカに生息していたゾウの群れは繁栄し、この繁栄はアジアからの新しい脅威がやって来るまで続いた。
 
  ケニアのAmboseli National Park(アンボセリ国立公園)からの報告は、危険の警笛を鳴らす。キリマンジャロ山のすぐ近くにあるこの公園には、中国の一会社が2年前に付近に幹線道路を建設する契約に成功するまでの30年間は、ほとんど密猟は無かった。それからというもの、アンボセリは生息していた「大きなタスカー(牙のあるオスゾウ)」のうち少なくとも4頭を、失ってしまったのである。
(翻訳協力 蔦村的子)

【JTEFのコメント】

 アフリカ象の密猟と象牙の違法取引が、1989年の象牙取引禁止以来かつてないほど深刻化しています。
 最大の原因は、中国の経済成長により、象牙需要が劇的に拡大したことでしょう。「象牙の合法的なマーケットをきちんと保護して、違法取引は排除する。」この考え方が、現実の前にいかに無力であるかは明白です。1989年に一度は閉じられた象牙マーケットは、巨大な需要によって完全な復活を遂げつつあります。
 マーケットを完全に閉じておけば、象牙の「儲かる商品」というイメージが20年の時の流れの中で相当風化していたかも知れません。そうさせなかったのは、象牙マーケットの「棺」に隙間を入れ、象牙マーケットの延命をはかってきた者たちです。その中心が、日本政府であり、日本の象牙業界でした。日本の象牙業界は衰退しつつあり、現在では象牙の密猟や違法取引に対する影響は中国ほどではないと思われます。しかし、1989年の象牙取引禁止以来、ワシントン条約の場で象牙取引再開を叫びつつけ、1999年に唯一象牙の合法な輸入を成し遂げ、「活かし続けた」象牙マーケットの貴賓席を「巨人」と化した中国にいわば「引き継いだ」のです。今後は、中国につかず離れずの姿勢で、象牙取引の利益に預かっていこうという方針でしょう。現在の事態に対する日本の責任は非常に重いといえます。


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