ゾウのニュース & JTEFのコメント
密猟された象牙やサイの角、南アフリカから密輸出
南アフリカでは象牙・サイの角の密猟者がスキルアップ
自然保護団体によると、野生生物の違法取引罪犯罪組織がより進化してきたため、象牙およびサイの角の貿易規制の取り締まりが一層困難になってきている
「サイの角と象牙の取引では強大な犯罪シンジケートや組織がかかわっているという証拠がいたるところで増えています」とトラフィック(野生生物の取引を監視・調査するNGO、TRAFFIC)東部/南部アフリカ局長のデイビッド・ニュートン氏は語る。
この数か月間に最低でも2回、象牙とサイが出荷された港としてケープタウンが浮上してきた。今週マレーシアではケープタウンから運ばれた500kgの象牙が押収され、その結果IFAW(国際動物福祉基金)は今週、象牙取引の完全禁止を求めた。
11月には香港の税関でケープタウンから出荷されたコンテナからサイの角33個と象牙の彫刻物800個以上が押収された。関係者によるとその貨物の目的地は中国だったようだ。
【南アフリカ国内の輸送経路】
今までは南アフリカ当局が押収した不法象牙は宝石や置物のような彫刻物や半加工品の小型出荷物であった。最近のマレーシアへの象牙の出荷は従来とは大きく異なっているようだ。
自然環境保護団体のCapeNature(ケープネーチャー)の生物多様性犯罪課のプログラムマネージャーのポール・ギルデンハイズ(Paul Gildenhuys)は「最近象牙の摘発量が増えています」とその傾向を裏付けた。さらに、ウェスタンケープ州で象牙の不法所持による逮捕が過去3年間で増加していると付け加えた。
しかしケープタウン港が最近の不法動物品の隠匿場所にかかわっていたとしても、シンジケートの拠点であるとは限らず、密輸者は不法品の輸送に場所や手段を選ばないとギルデンハイズは述べた。
ヨハネスブルグのO.R.タンボ空港において野生生物製品が押収された事実を指摘し、「ケープタウンは現在彼らが使っている港の1つだろうが他の場所も使っているでしょう」と述べた。
トラフィックによると密猟品の輸送方法は空輸から船便へと転換したようである。「2011年初期には空港で大規模な象牙が押収されましたが、後半にはほとんどの摘発が船便貨物から見つかったのです」とトラフィックは述べている。さらにトラフィックは南アフリカ港湾関係当局に対し、X線チェック装置への出資と輸出貨物の監視を厳しくするよう要求した。
象牙密輸者の逮捕に警察と密接に協力しているギルデンハイズは、密輸をくいとめようと努力している当局の努力は認めているが、「装置が多ければ多いほど検出できるチャンスも増えるのは明らかです」と指摘した。
【規制の強化】
IFAWの南アフリカ局長のジェイソン・ベル‐リスク氏は、政府の象牙取引規制の能力に対し、自然保護団体はずっと懸念を抱いていたと述べている。取引された象牙の量を考えればその象牙が密猟されたゾウからきたものであることは明らかだと指摘する。
ベル‐リスク氏は野生生物の取引に対する規制の強化が必要だと考え、「法執行当局、特に税関に最高度の重点をおくことが必要でしょう」と述べた。
トラフィックによると、昨年大規模な押収は13回あり、それぞれ800kg以上、合計23トンの象牙が差し押さえられたが、それは2500頭のゾウに匹敵する。2010年には大規模な押収は6回で合計10トンしかなかった。
「私たちは、象牙取引禁止がいかに正当かという重要な事柄に回帰しているのです」とべル‐リスク氏は述べる。
1990年以降象牙取引は禁止されているが、CITES (ワシントン条約)は例外を2つ認め、1999年と2008年に数か国のみが1度だけの備蓄象牙の輸出を許可された。南アフリカは最後の期間に備蓄象牙の輸出を許された国の1つだった。
過去ワシントン条約のもとで合法的に取引された象牙は、自然死したゾウか或いは間引きという南アフリカの観光的な野生生物管理によって殺されたゾウのものだった。
タンザニア、ケニアやモザンビークがゾウの密猟多発地域として有名であり、主要な輸出市場は極東アジア、特に中国であり、次にタイである。
【需要と供給】
しかし、徹底的な貿易禁止が不法取引を低減するという考えに異議を唱えるものもいる。「貿易禁止が常に有効とは限らない」とニュートン氏は言う。「事実、象牙貿易が禁止されているにもかかわらず。ゾウの密猟は増加し、象牙の押収は増えているのです。」
需要と供給の原則が象牙やサイの角の取引に影響しているとニュートン氏は指摘する。「象牙とサイの角の取引の増加はアジアの経済成長に関係していると考えます。これらのぜいたく品を買うことができる人々が増えてきたのです。」
象牙とサイの角に対する需要を低減するのにもっと効果的な方法がある。例えば消費国において無制限の貿易が与える野生生物への影響について消費者に啓蒙したり、消費国での取締りや規制を強化したりすることが必要だとニュートン氏は提言した。
(翻訳協力 石原洋子)
アフリカ象の密猟と象牙の違法取引が、1989年の象牙取引禁止以来かつてないほど深刻化しています。
最大の原因は、中国の経済成長により、象牙需要が劇的に拡大したことでしょう。「象牙の合法的なマーケットをきちんと保護して、違法取引は排除する。」この考え方が、現実の前にいかに無力であるかは明白です。1989年に一度は閉じられた象牙マーケットは、巨大な需要によって完全な復活を遂げつつあります。
マーケットを完全に閉じておけば、象牙の「儲かる商品」というイメージが20年の時の流れの中で相当風化していたかも知れません。そうさせなかったのは、象牙マーケットの「棺」に隙間を入れ、象牙マーケットの延命をはかってきた者たちです。その中心が、日本政府であり、日本の象牙業界でした。日本の象牙業界は衰退しつつあり、現在では象牙の密猟や違法取引に対する影響は中国ほどではないと思われます。しかし、1989年の象牙取引禁止以来、ワシントン条約の場で象牙取引再開を叫びつつけ、1999年に唯一象牙の合法な輸入を成し遂げ、「活かし続けた」象牙マーケットの貴賓席を「巨人」と化した中国にいわば「引き継いだ」のです。今後は、中国につかず離れずの姿勢で、象牙取引の利益に預かっていこうという方針でしょう。現在の事態に対する日本の責任は非常に重いといえます。