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ゾウのニュース & JTEFのコメント

誰もベトナムのゾウを救えないのか?

オンラインニュース・ベトナムネットブリッジ紙 2012年10月12日

目覚しいベトナムの経済発展のなかで、野生のゾウが棲家を失い、現在数十頭まで激減してしまいました。狭くなった生息地で、象牙のために殺されていくベトナムのゾウ。誰が何をするべきだったのでしょうか。

過去何年間にもわたってその衰えを見せなかった深刻な密猟のせいで、ベトナムでのゾウの個体数は、1900年代における1,500~2,000頭から、現在の数十頭にまで、急激に減少してしまった。

3年前、国際的な野生動植物の保護団体であるファウナ・フローラ・インターナショナル(FFI:Fauna and Flora International)は、ゾウの個体数が当時150頭となっており、絶滅の危機にあると、警告を発した。

密猟者はまだベトナムからゾウを根絶することはできないが、ベトナムが国として国内のゾウを保護するためにもっと施策を講じない限り、絶滅はすぐそこまで来ている。

2009年にFFI代表であるFrank Mombergは、ベトナムにあるゾウの主要生息地と信じられているDak Lak(ダク・ラク)のちょうど中央部にあるゾウ保護訓練センターを建設する仕事に着手していた。当時、人々はこのプロジェクトの実行可能性について楽観しており、プロジェクトが野生生物保護計画に大いに寄与すると信じ切っていた。

しかしながら、2012年9月、環境保護活動家Mark McDonaldは、環境保護団体は全体としてベトナムのゾウを保護する闘いを「放棄してしまってきた」と断言した。

ゾウ保護訓練センターは、ダク・ラク省にある国立公園に建設中であり、29頭のゾウの群れの住み家となっている。けれども、センターが小規模であり、かつ、限られた数のスポンサーしかいなくて資金不足のため、ここのセンター職員は密猟を防ぐこともゾウの命を守ることもできない。

2週間前、2頭のゾウが、まさに自然保護区域にある森林の中で、殺された。ここのセンター職員は、1頭のオスのゾウが、頭が薄紫に変色し牙が切り取られた屠殺体となっているのを発見した。

森林レンジャーは現在、1頭のオスのゾウが死んだことでそのゾウ集団が種を維持することが難しくなるのではないかと、危惧している。ダク・ラク国立公園ディレクター(管理者)は、ゾウの密猟は瞬く間に増加してしまったと、述べる。今年に入って今までの間に、6頭のオスゾウが殺された。

1990年代初期以来の猛烈な経済発展のせいで、ゾウの生息環境が狭まってしまったのである。かつてゾウの生息領域であった森林は、米やコーヒー、そしてゴムの農園、あるいは、工場、ダムや道路に変わった。そうこうするうちに、貴重な樹木のある広大な森林は、切り倒され金で売られてしまったわけだ。

誰もベトナムのゾウを守れなかったのか?

Mark McDonaldは、Mombergと、以下の点で意見を同じくする。つまり、地方当局は一方でゾウの保護を決定しながら、他方ではその生息環境に注意を払っていないのであると。

2006年にベトナム政府は、全国規模でゾウを保護する「緊急行動計画」を発表した。しかしながら、今までのところ、計画は実行に移されていない。

1993年に、ベトナム政府は、当時農場に変わった南部地域にいた13頭の野生のゾウを、他の地域に移すことを決定した。この作戦行動の結果は、最後の1頭がサイゴン動物園に運ばれたものの、ゾウにとっては死を意味した。

ゾウがその住み慣れた生息環境を失い食料源が枯渇するとき、利口で人間に近い知能を持っていると一般に信じられているゾウは絶滅の危機に瀕する。

ゾウはその生育環境が狭まったために、森を出て住宅地域に入り、水田を荒らし、人々を殺すようになった。地元住民は生き残るために、深い落とし穴を掘って自分たちを守り、自衛で改良を重ねた装置を使ってゾウと対決しなければならない。

関連ニュースとしてFFIは、中国からの象牙の大量需要が世界中でゾウの密猟を悪化させてきたことを、指摘してきた。
【翻訳協力】蔦村的子

 
【JTEFのコメント 11月】

ゾウがいることはその環境が豊かだということで、人間も森から多大な恩恵を受けています。本気でゾウを守りたいなら、森を守らなければなりません。経済的には豊かになったとしても、豊かな環境を失うことで人間に悪影響が起きることは明らかです。 また今回の報道では野生動物保全のための政策決定やプロジェクトの策定も、実行を伴わなければ何の意味もないという現実の一例です。予算措置と施策の具体化計画の進捗を図るメカニズムがない限り、効果を期待することはできません。


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