ゾウのニュース & JTEFのコメント
ケニア考察:密猟によるゾウの死亡数が急増
アフリカゾウの密猟が急増しています。近年の価格高騰で象牙取引禁止策の効果は弱まり、密猟者の利益は増し、政府役人が買収され、さらには過激派組織までが象牙欲しさにアフリカゾウを殺害する事態となっているのです。
ナイロビを拠点に運営している環境保護団体「セーブ・ジ ・エレファント(以下STE: Save The Elephant)」の木曜日の発表によると、ケニアで14年間、約1000頭のゾウを調査した結果、体が大きく象牙に高値がつく年長のオスの死亡率は極めて高く、密猟による死亡数はさらに増加しているとのことだ。
サンブル地区には2000年の時点で30歳以上のオス38頭の生息が確認されていた。しかしこのうち2011年に生きていたのはわずか5頭だった。同じ期間に30歳以上のメスの数も半減したが、死亡したうちの半分は違法に殺害されていたことが調査の結果明らかとなった。
過去数年間でアフリカゾウの密猟による死亡数は急増している。アジア地域―特に中国で希少な天然資源として需要が高まり、象牙価格が高騰していることが殺害増加の主な原因となっている。
中国で増加している豊かな中流階級が、自分たちの欲しがるほんの小さな装飾品に使用されている象牙を得るために、どのようにゾウの命が奪われているかを学ばない限り、このまま地球上のゾウが絶滅するまで密猟が続く危険性があると動物保護の専門家たちは危惧している。
「密猟者が手厚く保護され常に監視下に置かれている群れまであえて標的にするほど、象牙の需要と価格は高まっている」と報告発表の声明の中でSTEの創設者イアン・ ダグラス-ハミルトン氏は語った。「アフリカ中の他の保護区域でも同様のことが起きている」という。
水曜日に発売された論文審査のあるオンライン科学雑誌『PLoS One』に掲載された新たな研究結果では、サンブル地区のゾウたちが自らの直面する危機的状況に気付き、繁殖率を上げたことが報告されている。
アフリカゾウたちは1970年代から80年代に絶滅の危機に瀕した。しかし近年の価格高騰で象牙取引禁止策の効果は弱まり、密猟者の利益は増し、政府役人が買収され、さらには過激派組織までが象牙欲しさにゾウを殺害する事態となっている。
毎週コンテナ一杯の何トンもの象牙がアフリカの港やアジアの荷揚げ港で発見、報告されている。
今月初めにはケニア最大の自然動物公園内で12頭のゾウの家族が殺害され、すべての象牙が抜き去られていた。
しかしダグラス-ハミルトン氏は、まだ戦いに負けたわけではないと信じている。
「我々は30年前にもこの問題に直面したので、象牙の需要さえ減少すればこの状況を管理し覆すことができると知っている。意識の高い個人やNGO、政府が象牙の需要を減らすよう一致団結して行動することが求められている」と同氏はいう。
過去3年間の研究でサンブル地区に生息するゾウの56パーセントが密猟の犠牲となったことが判明した。
1998年にはオスは生息数の42パーセントだったが、2011年には立派な象牙の持ち主である彼らの占める割合はわずか32パーセントに減ってしまった。
【翻訳協力】秋谷亜希子
2012年のゾウ密猟数の多さは1970年代〜80年代の悪夢の再来だとありますが、日本が象牙取引禁止前の1979年から1988年までの間、正規に輸入した未加工象牙は約2,727トン。ゾウの数にして12万頭前後にもなります。この期間は、まさにアフリカ大陸でゾウが象牙目的で大量殺戮されていた時期と重なります。日本以外のアジア諸国での象牙需要が高まったのは確かですが、そのきっかけは象牙を買い続け消費続けた日本だとも言えます。