ゾウのニュース & JTEFのコメント
中国が6トンの象牙を粉砕
中国広東省広州の役人が押収した生牙と彫刻象牙をゾウの密猟を啓蒙するために粉砕した。
中国は、押収済みの象牙・彫刻象牙を粉砕した。これは、アメリカが6トンの密輸象牙を破棄したわずか数か月後のことである。
広東省、広州の役人はイギリスやゾウの生息国であるケニア、ガボン、タンザニアを含む10か国の代表が出席したイベントで、1月6日月曜日に押収象牙を粉砕した。
ゾウの密猟はここ数年記録的に増えている。2011年は25000頭もが殺された最悪の年だったが、2012年には22000頭殺された。象牙に彫刻した美術工芸品が売られ、象牙は地位の象徴とみなされている中国が世界最大の市場である。
自然保護活動家からは歓迎の動きだ。アフリカ野生生物基金(African Wildlife Foundation)のパトリック・べルジン氏は「これは、起きているゾウの密猟や野生動物の密売問題の重要性に対する中国国内と世界の人々の意識を高めるための中国の勇気ある貴重な第一歩である。中国政府はこの問題を真剣に受け止めているとして称賛されるべきだ」と述べた。
野生生物違法取引をモニタリングするTRAFFICの象牙専門家であるトム・ミリケン氏は「押収象牙の粉砕は、象牙の需要を低減させようという他の政府の努力と連携することによって象牙の違法市場に多大な影響力を与える可能性のある、重要な公式声明である」と述べた。
中国人の元バスケットボール選手であり野生動物のキャンペイナーでもあるヤオ・ミン氏が「国民意識を高める素晴らしい第一歩である」と述べたことを、このイベントに参加したIFAW(動物福祉国際基金)は、「素晴らしかった。中国全土にこのようなイベントを広げてほしい」と述べた。
しかしながら、ある環境保護活動家は、押収象牙を粉砕することで希少性を高め、値段を釣り上げるので密猟を増加させると言う。
駐中国イギリス総領事のアラスター・モルガン氏はこのイベントに「イギリスは象牙の取引と消費禁止を支援している。国際的な象牙取引は1989年から禁止されているのに、アメリカと中国では国内取引が許可されている。」と述べた。
アメリカは、野生生物の違法取引はテロリストグループへの資金援助が行われていることもあり、国内の治安問題を高めるということにこたえる形で、昨年11月、象牙を粉砕した。これはオバマ政権による違法行為の取り締まり拡大の一部である。
7日朝のNHKニュースでも流れた中国で行われた象牙破棄のニュースです。粉砕された6トンは、広大な中国が持つ在後象牙の量から考えるとほんの1部にすぎませんが、アフリカ諸国で象牙密売に中国人が主な役割を担っているという声も大きくなって海外からの批判に中国が保護の姿勢を見せたことは進歩と言えるでしょう。(なお、日本の場合は密輸により没収されたり、任意放棄された物は(象牙も含め)、一部普及啓発用の展示や学術研究に使われるほかは、粉砕の上焼却処分されています。この点では、日本の処理は適切だと思います。)
ただし注意が必要なのは、中国はゾウの密猟と象牙の違法取引には厳しい姿勢で臨むとする一方、象牙の利用・消費を減らすべきだいう姿勢をとっているわけではないことです。ワシントン条約の場で一定の象牙取引が合法化されることを支持し、合法化されたものを輸入することを強く求めていくことに変わりはありません。この点は、日本政府と同じです。
押収象牙の廃棄は、せっかく押収したものが再び合法市場に流出する危険を減らすことになる点で、また記事にもあるとおり違法行為と戦うという姿勢を政府が明確にする点でも意義深いと思います。
重要なのは、この動きの趣旨を、(由来が違法か合法化に関係なく)象牙利用・消費の需要そのものを減らしていく動きに結び付けていくことです。象牙市場のカギを握る大量消費国が、「合法化されればいくらでも買いたい」という姿勢を示し続ける限り、密猟・違法取引抑制の効果が十分あがることはないように思います。