トラのニュース & JTEFのコメント
6カ国の警察がトラ取引の容疑者25人を逮捕
世界で最も絶滅が危惧される種の1つであるトラの違法取引を取り締るため、インターポール（国際刑事警察機構）の調整のもと実施された国際的法執行作戦により、トラの違法取引容疑で25人が逮捕された。
8月と9月の2カ月間実施されたこの作戦には、トラが生息する中国、インド、ネパール、ロシア、タイ、ベトナムの6ヶ国の警察が関わった。
法執行の実施は全て、リヨンにあるインターポール事務総局の環境犯罪プログラムに従って調整された。
インターポールは関係加盟国と緊密に連携し、各国の国家中央事務局に共通基盤を提供し、セキュリティーの確保された警察通信システムI‐24/7を使用して情報交換と調整を行った。
ロシアでは、当局が入手した犯罪情報によって主要な密輸ルートが明らかになった。
この作戦期間中直接実施された法執行には、インド当局による野生生物犯罪容疑者10人の逮捕が含まれる。
タイでは、バンコクのスワンナブーム国際空港での逮捕も含め、国境をまたいだトラ取引に関わったとされる多くの密猟者が、タイ王国国家警察庁によって逮捕された。
ベトナムのホーチミン市チョロン地区では、トラや稀少ネコ科動物の皮が並べられ公然と売りに出されている。
ベトナム警察は、ハノイで実施した1回の強制捜査においてトラ6頭分の骨と6個の頭蓋骨を押収したほか、別の捜査で2頭のトラの死体と50キログラムのトラの骨を押収した。ベトナムに生存している野生のトラはわずか30頭ほどと考えられている
野生生物の不法取引や他の環境犯罪に対抗するための新たな法執行手段として、ベトナムの環境警察局は6月に24時間野生生物ホットラインを開設した。150名以上の環境警察官が通報に対処するための訓練を受けている。
「ベトナム政府には、保護動植物の違法取引を阻止するための強力な法律が整っていて、環境警察はそれらの法の執行に力を尽くしています」と、環境警察局副局長のルオン・ミン・タオ氏は言う。
2ヶ月間のインターポールの作戦による25人の逮捕に加え、トラの頭蓋骨など50キログラム以上の骨が押収され、参加6カ国での強制捜査によって主要な密輸ルートが分断された。
「インターポールに支援されたこの国際的な捜査に関わった各国の警察は、絶滅危惧種をねらう悪質な犯罪者らに、彼らの違法行為が見逃されることはないことをはっきり示したのです」と、インターポールの環境犯罪部長デイヴィッド・ヒギンズ氏は言う。
インターポールの法執行の対象外であった中国・延吉市の漢方店で売られているトラの皮。中国北東部と北朝鮮の国境に位置する生物圏保護区の長白山から持ち込まれたものと思われる。
生息地の消失、密猟やトラの皮や骨の違法取引に携わる犯罪組織の関与などによって、生き残っている野生のトラは3200頭を下回る。
「単に密輸品が押収されたということよりも犯罪者が逮捕されたことが素晴らしいニュースです」と、デビー・バンクス氏は言う。氏は、英国を拠点として違法な野生生物取引などさまざまな環境犯罪に対する調査やキャンペーン活動を行うNGO、EIA(環境調査エージェンシー)においてトラ・キャンペーンの代表を務めている。
「組織的犯罪には組織的に対抗することが必要です。インターポールのトラ作戦は正しい方向への第一歩ですが、持続させることが大事です」と、バンクス氏。
自然保護活動家らは、11月22～23日に開催される首脳クラスによるトラ・サミットによって、一致団結した行動と資金調達が図られるのではないかとの希望を抱いている。このサミットはロシアのウラジミール・プーチン首相と世界銀行のロバート・ゼーリック総裁がホスト役となってロシアのサンクトペテルブルグで開催される。
このサミットの目的は、13のトラ生息国すべてからこれまでになくハイレベルなトラ保護に向けた約束を取り付けることである。
「サンクトペテルブルグのトラ・フォーラムで最重要議題に取り上げなければならないのは、トラ取引を支配している犯罪組織をたたくための巧妙で専門的な警察活動に必要な、さらなる資金調達についてです」と、バンクス氏は言う。
世界的規模の自然保護団体である世界自然保護基金WWFは、トラ生息国と協力して野生のトラの保護に力を入れてきた。WWFは、サンクトペテルブルグのサミットでは、持続可能な資金調達の仕組みを後ろ盾にして2022年までに野生のトラの数を倍増させるための行動を開始するよう各国に義務付ける、拘束力のあるハイレベルな合意に至ることを希望している。
（翻訳協力 松崎由美子）