トラのニュース & JTEFのコメント
人を襲ったトラとの対決、終了まで数カ月
数か月の間、餌付きの罠や、催眠剤の槍から巧みに逃げていたが、インド北部のウッタル・プラデーシュ州で8人を襲撃したトラが、昨日、捕獲された。森林局の役人とインド野生生物トラスト( Wildlife Trust of India (WTI))の合同チームによる。
トラは、オスでやっと大人になったぐらいだと思われる。昨日夜遅く、催眠剤で撃たれ、シャジャハンプール森林区の地区森林官であるPP・シン氏率いる専門家のチームによってラクナウ動物園に連れてこられた。インド野生生物トラスト(WTI)の生物学者であるミリン・パリワカム氏、獣医であるムスタク・アメッド氏とサジャド・アメド・カン氏も捕獲する間、地区森林官をサポートした。
昨日の捕獲作業は、トラが、ファルカバード森林区のナグラ・ヒラ・シン村にある、人里離れたプロソピス・ジュリフローラ(低木)植生の茂みに隠れていた午後に開始した。トラの隠れ場所には大きな人だかりができ、石を投げる人もいたというのに、三回も催眠剤の矢を打たれた。数人がけがをし、一人はかなり激しく負傷した。
「以前に捕獲しようと試みたときに撮った縞の写真や、土に残った足跡などから、このトラこそ自分たちが狙っているトラと認識しました」とPP・シン氏が正式に発表した。
インドとネパールの国境付近であるピーリービート森林区をさまよっているのはわかっていたが、このトラは、5月4日に、最初に人を襲った。何カ月も、このトラは、ピーリービート県、シャージャ県、サウス・ケーリー県、ハルドーイー県、ファッルカーバード森林区などを通って、南を移動していた。8月26日までに8人の人を殺している。しかし、専門家たちは、このトラを真の人食いトラとは考えていない。
「8人もの人の命が奪われたことは実に不幸なことです。しかし、このトラは、人間だけを狙っているのではなく、ニルガイ(野牛)、アキシスジカ、イノシシ、ブラックバックなどの野生の獲物も捕獲しています。さらに、「人が犠牲になったのも、森林地域のみです」とパリワカム氏は明らかにした。
過去数カ月の間、捕獲を試みていたチームは、地元の人々に働きかけて、トラと衝突するのを最小限にするようにと呼びかけた。トラが目撃された地域には、野営キャンプを設置し、人との争いを防いだ。トラは、主に、人口の多い居留地付近にいたが、森林局の結束強化された努力によって、8月以来、人間の犠牲者は出ていない。
「対応の早いグループは、お互いに密接に協力して動いている3つのチームから成っています。村レベルの警戒チームは、地元の人々、森林局の役人、それに、社会学者のプレム・チャンドラ・パンディ氏を含んでいます。パンディ氏は、影響を受けている村人たちと密に協力して動いていて、人々をなだめ、村民の意識を高め、単独で森林に出かけないようにと注意を呼びかけています。他の2チームは、トラを追跡し捕獲を試みています」とインド野生生物トラスト(WTI)で人と動物間のあつれき問題を扱う部門長であるアニール・クメール・シン博士は述べた。
「追跡して、野生界にいる巨大な肉食動物に催眠剤の矢を放ち、捕獲することは、難しい仕事です。人間が支配する場所においても同様です」と専門家は言う。
さらにPP・シン氏は付け加えた。「このトラは、すべてのわなや試みに対して慎重になってきていて、捕獲はますます難しくなっていました。さらに、他にも問題がありました。例えば、雨は人々の不満を癒しますが、トラの足跡を消してしまいます」
数ヶ月間、作業は、森林局を始め、世界自然保護基金(WWF)インド支部を含むNGOの多くの専門家を動員した。国際動物福祉基金(IFAW)とインド野生生物トラスト(WTI)の獣医である、バスカール・チョウジュリー氏とアビジット・バーワール氏、生物学者のシラ・ウディン・マツンダー氏、さらに組織の主任獣医であるNVK・アシュラフ博士も捕獲作業のさまざまな段階でサポートを行った。
次の数日間で、獣医のムスタク・アメッド氏は、引き続き、捕獲後のトラの行動や健康状態などの観察を行う予定である。
(翻訳協力 石塚信子)