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トラのニュース & JTEFのコメント

人を襲ったトラとの対決、終了まで数カ月

ニューデリー、2010年10月15日

数か月の間、餌付きの罠や、催眠剤の槍から巧みに逃げていたが、インド北部のウッタル・プラデーシュ州で8人を襲撃したトラが、昨日、捕獲された。森林局の役人とインド野生生物トラスト( Wildlife Trust of India (WTI))の合同チームによる。

トラは、オスでやっと大人になったぐらいだと思われる。昨日夜遅く、催眠剤で撃たれ、シャジャハンプール森林区の地区森林官であるPP・シン氏率いる専門家のチームによってラクナウ動物園に連れてこられた。インド野生生物トラスト(WTI)の生物学者であるミリン・パリワカム氏、獣医であるムスタク・アメッド氏とサジャド・アメド・カン氏も捕獲する間、地区森林官をサポートした。

昨日の捕獲作業は、トラが、ファルカバード森林区のナグラ・ヒラ・シン村にある、人里離れたプロソピス・ジュリフローラ(低木)植生の茂みに隠れていた午後に開始した。トラの隠れ場所には大きな人だかりができ、石を投げる人もいたというのに、三回も催眠剤の矢を打たれた。数人がけがをし、一人はかなり激しく負傷した。

「以前に捕獲しようと試みたときに撮った縞の写真や、土に残った足跡などから、このトラこそ自分たちが狙っているトラと認識しました」とPP・シン氏が正式に発表した。

インドとネパールの国境付近であるピーリービート森林区をさまよっているのはわかっていたが、このトラは、5月4日に、最初に人を襲った。何カ月も、このトラは、ピーリービート県、シャージャ県、サウス・ケーリー県、ハルドーイー県、ファッルカーバード森林区などを通って、南を移動していた。8月26日までに8人の人を殺している。しかし、専門家たちは、このトラを真の人食いトラとは考えていない。

「8人もの人の命が奪われたことは実に不幸なことです。しかし、このトラは、人間だけを狙っているのではなく、ニルガイ(野牛)、アキシスジカ、イノシシ、ブラックバックなどの野生の獲物も捕獲しています。さらに、「人が犠牲になったのも、森林地域のみです」とパリワカム氏は明らかにした。

過去数カ月の間、捕獲を試みていたチームは、地元の人々に働きかけて、トラと衝突するのを最小限にするようにと呼びかけた。トラが目撃された地域には、野営キャンプを設置し、人との争いを防いだ。トラは、主に、人口の多い居留地付近にいたが、森林局の結束強化された努力によって、8月以来、人間の犠牲者は出ていない。

「対応の早いグループは、お互いに密接に協力して動いている3つのチームから成っています。村レベルの警戒チームは、地元の人々、森林局の役人、それに、社会学者のプレム・チャンドラ・パンディ氏を含んでいます。パンディ氏は、影響を受けている村人たちと密に協力して動いていて、人々をなだめ、村民の意識を高め、単独で森林に出かけないようにと注意を呼びかけています。他の2チームは、トラを追跡し捕獲を試みています」とインド野生生物トラスト(WTI)で人と動物間のあつれき問題を扱う部門長であるアニール・クメール・シン博士は述べた。

「追跡して、野生界にいる巨大な肉食動物に催眠剤の矢を放ち、捕獲することは、難しい仕事です。人間が支配する場所においても同様です」と専門家は言う。

さらにPP・シン氏は付け加えた。「このトラは、すべてのわなや試みに対して慎重になってきていて、捕獲はますます難しくなっていました。さらに、他にも問題がありました。例えば、雨は人々の不満を癒しますが、トラの足跡を消してしまいます」

数ヶ月間、作業は、森林局を始め、世界自然保護基金(WWF)インド支部を含むNGOの多くの専門家を動員した。国際動物福祉基金(IFAW)とインド野生生物トラスト(WTI)の獣医である、バスカール・チョウジュリー氏とアビジット・バーワール氏、生物学者のシラ・ウディン・マツンダー氏、さらに組織の主任獣医であるNVK・アシュラフ博士も捕獲作業のさまざまな段階でサポートを行った。

次の数日間で、獣医のムスタク・アメッド氏は、引き続き、捕獲後のトラの行動や健康状態などの観察を行う予定である。
(翻訳協力 石塚信子)

【JTEFのコメント】
人と動物間のあつれきは、人の生命身体を危険にさらし、多くのクマの生命を奪います。さらにクマの保全に対する人々の理解を後退させるという点でも非常に深刻です。8人を捕殺したトラは放っておくわけにはいきません。捕獲し動物園に贈られたわけですが、大事なことはWTIのチームがこのトラを、確信をもって捕獲したことです。人食いトラではないとのコメントもありました。日本でもクマが人里に出て殺されていますが、悪さをしたクマではない他のクマを殺してしまうことも多々あります。絶滅の危機にあるという意味で、トラと日本のツキノワグマは同じです。1頭の命の重みを考えてのWTIの活動に敬意を表します。

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