トラのニュース & JTEFのコメント
トラチーム20年間のあつれきの解決策
ロシア辺境の集落には絶滅危惧種のアムールトラが迷いこむことがある。猛獣の生息地域内に住むこと自体不安に違いないが、それが絶滅危惧種のアムールトラとなると、状況は特に難しい。
ロシアの過疎村にトラが迷い込んでくれば脅威であるが、同時にそれは難題を意味する。村人たちは絶滅の危機にある動物を殺さずに、自分達の安全をどのように確保できるのか。
政府は1999年に「人とトラのあつれき」を解決するためトラ対応チームを設立した。ロシア極東地帯に散在する森林15万平方メートルにわたりアムールトラは生息しているが、そこには小さな集落が点在している。
ロシアWCSプログラム局長のダール・ミクウェーリャ氏によると、「トラの生息地か人の居住域かというグレーゾーンには、数としては非常に少ないがトラが常に村の中や近くを通る」という。トラが村に近づきすぎて家畜が襲われることがあり、主に犬や牛がやられることが多い。人を襲うことは非常に稀である。
過去10年間にアムールトラに襲われて殺された家畜は254頭、そのうち100匹が犬である。人は19人が襲われ、11人がけがをし、2人が死亡した。トラを目撃したり、トラに襲われた動物を発見したら、直ちに地方当局に連絡するとチームに伝達される。「地方当局が状況を判断し、必要とあればチームが呼ばれる。広大な地域を管轄しているため、チームが村に到着するには数日かかることもある」とミクウェーリャ氏は説明する。
到着後、対応チームはいくつかの選択肢を考える。もっとも簡単な方法は、打ち上げ花火や照明弾などで脅して追い払う方法であるが、時には捕まえる必要もある。
「捕獲することも多いですが、捕獲後どうするかは状況に応じて判断します。無線送信機つきの首輪をつけて野生に戻すこともあります。村に出没する可能性を減らすために、別の場所に移動させることもあります」
しかし、トラがけがをしている場合は状況がもっと複雑になる。ロシアで人を襲うトラの多くは密猟者に撃たれたり、罠によって負傷したトラだという。けがのせいでトラの行動が変わったり、狩猟不能になったために人里に行って家畜を襲うことになる。
自然保護活動家グドリコ氏によると、トラが人を襲ってしまう一番の原因は、失敗した密猟だと指摘する。
負傷したトラはリハビリした後、再び森に返されることもある。トラほどの大きさの野獣が近所をうろうろすることは非常に恐ろしい。
しかし、トラが重傷を負ったり非常に危険な場合は、トラ自身を助けるためにも村人の安全を守るためにも野生には戻さないこともある。
グドリコ氏は密猟者により顔に銃撃を受けた若い雄トラ、ボリャのリハビリの状況を記録した。「銃弾はトラの歯3本と下あごを砕いた。ウチョス野生生物リハビリセンターの獣医が針金で固定したが、ボリャはけがのせいで一生野生に戻ることはできない。
グドリコ氏らは現在、アムールトラが感染しやすい伝染病がトラの行動パターンに影響を及ぼしたり、対人攻撃性を強めてはいないか調査することを計画している。
個体数の確認
負傷したトラはチームによって野生動物リハビリセンターに運ばれることがある。チームの努力により救助されたトラの数は不明だが、こういう現状では1頭でも助けられれば意義がある。
最近の調査によると、野生のアムールトラは現在350頭しかいない。「人とトラのあつれきにより生じるトラの減少は少なくなってきていると思われる。まだ改良の余地があり、村人の多い地域からトラをおどして追い払う方法は思ったほど成功していない」とミクウェーリャ氏は指摘する。
「このように生息数が少ない現在、減少傾向を逆転しなければならないことはたしかだ」とBBCニュースに語る。「20年前は銃がおもな対抗策だったため、その減少の重要な要因が人為的であったと考えられる。」トラ対応チームはそのような僻地の村人たちに彼らの安全を守ろうとしているチームがいることを伝えたいと考えている。
「トラのような大きな野獣が近所をうろうろしたらそれはおそろしいことだ。その対策をとるチームがいるということは非常に意味がある」 とミクウェーリャ氏は述べた。
(翻訳協力 石原洋子)