トラのニュース & JTEFのコメント
道路建設でインドネシアのトラがピンチに
インドネシアは、高速道路建設にゴーサインを出そうとしている。その道路は、野生のトラの存続に最も適した生息地の一つである国立公園を横断しようとしていると、環境保護者たちは木曜日に警告した。
この動きは特に危険であると彼らは言う。なぜなら、政府がトラを絶滅の危機から救うためなら何でもすると、ロシアで協定にサインをしてから、数ヶ月しかたっていなかったからだ。
現在、世界には3500頭のトラが残っている。スマトラ島の4つの州にまたがっているケリンチ・セブラット国立公園には、約190頭が生息している。これは、中国(45)、ベトナム(20以下)、ネパール(155)、ラオス(17)、カンボジア(20)*(( )はIUCN2010より)を合わせたものよりも多い数である。
「われわれは、これを阻止するために、あらゆる努力をするべきです」とワシントンD.C.にあるトラ救済基金(Save the Tigers)のマヘンドラ・シュレスタ氏は言う。「アジアの中心的なトラの生息地にとっては致命的になるからです」
公園を横切って4つの高速道路を建設する計画は、今まで近づくことができなかった場所へと村民や違法な森林伐採者たちを招くことになる。繁殖地や移動のための細い通路にも侵入し、もろい生態系を破壊することになる。
シュレスタ 氏は、この計画は、2020年までにトラの生存数を2倍にするという努力の一環として、依然としてトラを保護しその貴重な生息地を守り続けている13カ国によって締結された協定(タイガーサミット)を馬鹿にしていると述べた。
140万ヘクタールのケリンチ・セブラット国立公園は、バリサン山脈によって分断され、見渡す限りヤシ農園に囲まれている。同じように危機に瀕しているスマトラサイ、ゾウ、ウンピョウ、マレーグマや370種を超える鳥たちの大切な生息地でもある。また、4000を超える植物も生息する。
森林管理局は、道路建設の契約を破棄し、土地保護に向け、インドネシアの法改正を議会に要請すべきであるが、この計画に対しては依然として口を固く閉ざし、開発のために自然保護区に道路建設をすることは違法であると述べるに留まっている。「単にこれは提言にしか過ぎません」と当局のスポークスマンで、ある名前で通っているマシュド氏はAP通信に語った。
しかし、依然として自然保護者たちは憂慮している。人口2億3700万の国で勢力を高めている地域のリーダーたちが、計画を推進しているからだ。中央政府からの何の圧力も受けることなく、この地域のリーダーたちは、計画を押し進めている。
ジャンビ、ブンクル、西スマトラの州の役人たちは、公園を横切る4つの道路は、幅が12メートルは必要であると述べている。火山の噴火、地震、洪水、その他の自然災害の際に、人々の『避難路』として使うためである。
「われわれは、国立公園の大切さを十分に理解しています。環境を破壊しないように細心の注意を払うつもりです」とブンクル州の道路開発計画責任者であるナシュシャ氏は語り、さらに、計画に携わるすべての団体を教育するためにも、包括的調査が必要であるとも述べた。
ケリンチ・セブラット国立公園に生息するトラの3分の2が成熟したメスである。
ここは、過去5年間でトラの生息数が増加している、数少ない貴重な場所の一つである。手つかずの生息地と、遺伝子学的にも存続可能な、世界でも希少な場所を保護しようと密猟を撲滅するために日々戦うパトロールチームのおかげである。
公園内には、すでに4つの道路がある。さらに広い高速道路を建設するとなると、これから数ヶ月にわたって、数トンの重量機器やチェーンソー、さらに数百人の労働者たちが入り込むことになる。
「これらの道路は、トラの生息地をさらに分散させ、通り道の回廊でさえも分断することになります」とインドネシアで最も著名な環境保護団体ワルヒのスワディ氏は述べた。
「それこそが、われわれの最も心配することなのです」
彼は、多数のさまざまな国内外の非政府組織からの350人の環境保護者たちの一人である。彼らは、この道路建設計画は、ケリンチ・セブラット国立公園をバラバラにされた森林の寄せ集めに変えてしまい、トラやその生息地を危機に陥れると、共に結束して主張している。
この計画が承認されると、インドネシアのありとあらゆる保護区での道路建設の口火を切ることになると彼らたちは言う。
「われわれは政府にこの計画について考え直すように要請しました」と地元のトラ保護団体、Forum HarimauKita(トラフォーラム)の責任者であるHTウィビソノ氏は述べた
(翻訳協力 石塚信子)