トラのニュース & JTEFのコメント
中国、「合法な」トラの皮の取引を開始
環境調査エージェンシー(EIA)は、スイスのジュネーブで今週開かれるCITES(ワシントン条約:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の会議に先立って、中国がトラを含む野生ネコの皮の取引を再開したことをアメリカとイギリス、それにすべてのトラ生息国に警告した。EIAによると、中国は、飼育下で繁殖されたネコや議論の的になっているトラファームなどから合法的に得たトラの皮を取引できるようにする毛皮登録計画を再開した。しかしNGOは、この計画は透明性に欠け、密猟された野生トラの皮の販売を容易に隠ぺいする手段を提供すると主張する
「毛皮登録計画は完全に間違った方向に進んでいます。トラやヒョウの保護にはまったく役に立たないばかりか、違法取引を隠ぺいし、消費者市場を混乱させるだけです」と、あるプレスリリースの中で、EIAのトラ・キャンペーン代表を務めるデビー・バンクスは批判した。
中国は、3億ドルの初期基金を携えて、野心的にも野生のトラの生息数を2022年までに倍増させると約束した世界トラ回復プログラム(GTRP)の調印国になっている。しかし、毛皮登録計画の再開は、トラを保護するという中国の約束を「単なる空手形」にするものだとEIAは主張する。
EIAは、ネットで販売されているネコ科動物の皮をすでにいくつか見つけたと言明した。ヒンドゥスタン・タイムズ紙によれば、トラの敷皮1枚がおよそ12万4千ドル(約958万円:1ドル=77.26円、2011年8月26日現在)、トラのはく製が70万ドル(約5400万円)だという。ヒョウの皮は10万ドル(約770万円)から30万ドル(約2300万円)で取引されている。
「CITESの参加国は、中国の策略の結果、だまされたと感じているかもしれません」と、バンクスは言った。「彼らが気づきそこなったのは、中国は国内におけるトラの骨の取引禁止には賛成したにもかかわらず、皮については確約せず、取引されている皮の量について質問されても答えなかったことです。でも、取引は実際に行われています」
野生のトラは1900年にはおよそ10万頭生息していたが、現在は世界全体でおよそ3500頭と見積もられている。過去10年だけでも、トラが生息可能な地域のおよそ40パーセントが失われた。また、すでに前世紀中に3種類のトラ亜種が絶滅し、1種は飼育下でのみ存続していると思われる。トラ保護の難しさの根底には、こういった寒々しい幾多の統計がある。トラは、生息地の破壊(すでに大部分は失われている)、皮や伝統薬の原料を目的とした密猟、獲物となる種の減少、それに人とトラ両方の被害を含む、人間とトラの間の摩擦によって脅かされている。
(翻訳協力 木田直子)