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トラのニュース & JTEFのコメント

食べ物をめぐる争い  バングラデシュでは、人間が違法にシカ肉を食い尽くして、トラの生存を脅かしつつある

Roberta Kwok、2012年7月10日

バングラデシュ保護区近郊に住む人々は、毎年何千頭もの違法な狩猟によって得たシカ肉を食べているが、おかげで、シカを食料源にしているトラは、絶滅の危機に瀕するかもしれない。

研究者は、獲物の数が減っているせいでトラの生存が脅かされていることはわかっているが、この問題の重要性評価はほとんどしていない。自然界の動物の獲物を人間が狩り獲るという情報は手に入れにくいかもしれない。「というのは、こうした行為が秘密裏で非合法な性質を持つからです。」と、オンライン誌Animal Conservationの研究著者は書いている。

トラの保護区でもあるバングラデシュ・スンダバンズ・森林保護区の近隣地区を、研究調査チームが研究した。トラはおもに、シカの一種であるアキシスジカを食料とする。研究者たちは、何頭のシカが密猟にあっているのか見つけ出すため、地元の人々に派遣され、保護区周辺に住む800世帯にインタビューを行った。

ほぼ半数の世帯がシカ肉を食べたことがあると述べ、各世帯は、毎年平均して1.13キログラムのシカ肉を食していた。調査回答者のほぼすべてが、こうしたシカは近くの保護区で捕れたと語った。人々のほとんどが、法を破っていることは承知していたが、その述べるところによれば、自分たちは当局に捕まることも、罰として低額の罰金を払わなければならないことも恐れないという。

研究チームは、この調査に基づき、こうした世帯は毎年11,195頭のシカを食べていると推定した。密猟を減らすために、研究著者達は森林保護区管理官達に、森林近郊のより裕福な世帯に焦点を絞るよう、提案した。しかし、多くの人々がシカ肉をタダで入手していた現状からみて、単にシカ以外の別種の安い肉を提供するだけでは、彼らがその風習を変えることはありそうにない。

出典:”Assessing the threat of human consumption of tiger prey in the Bangladesh Sundarbans(バングラデシュのスンダバンズにおけるトラの獲物を人間が食する脅威の査定)” 2012年、Mohsanin, S.他著、Animal Conservationオンライン誌doi(デジタルオブジェクト識別子)10.1111/j.1469-1795.2012.00571.x.
【翻訳協力】蔦村的子

【JTEFのコメント 2012年7月】

バングラデシュだけでなく、多くのトラとともに生きる人たちは、トラの餌となる動物をトラと奪い合っています。今回の研究では、シカの肉は比較的裕福な世界でより多く消費されているとされています。シカを獲らないと生きていけないという典型的なケースではないようです。
野生動物を守ることがその地域の環境を守ることだと頭で理解していても、自分たちの食料(ここではシカ)を野生動物と分かち合うという考えに立つ人は稀です。結局、シカの捕獲が違法であることの周知徹底と取締の継続しか対処法はありません。その一方、地域の暮らしと問題点についての社会学的調査と自然生態系に行き過ぎた負荷を減らしつつ、暮らしを向上させる地域参加型のプロジェクトの充実も求められます。


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