トラのニュース & JTEFのコメント
レポーターによる発見 — 中国のトラ・ファームは密猟を減らすより増やす可能性が高い
中国のハルビンにあるアムールトラ森林公園(Siberian Tiger Forest Park)で檻に入れられたアムールトラ。スチュワート・レブンワース記者によれば、この施設のトラたちは主に虎骨酒の違法市場に供給するために育てられているという。
近年、絶滅危惧種の取引対策が手ぬるいことについて中国は何度も非難を浴びている。その状況は少しずつ変わり始めているが、政府が実際には問題を助長していることを示す例がいまだに見受けられる。
マクラッチー新聞(McClatchy Newspapers)のスチュワート・レブンワース記者は、こういった例のひとつを明るみに出して見せた。中国のトラ・ファームネットワークである。サファリパークとして観光客から入園料を取ってはいるが、その実態は全く異なることを彼は知った。
彼はいくつかのトラ・ファームを訪れている。最初に訪れたトラ・ファームは中国北部のハルビンにあった。従業員が観光客をバスに乗せ、20頭かそれ以上のトラが入れられた広いゲート付きの敷地内に乗り入れ、ジープの窓から生きたニワトリを投げ入れては、トラたちがすぐさま引き裂く様子を見せていたという。
「最初は、ニワトリの運命を見てひどいと思いました」と、レブンワースは話した。「でもそれから、もっとずっとひどいことが行われていることに気が付いたんです。これらのパークがあるのは、虎骨酒を造るためだったんです」
虎骨酒は古い調合薬で、かつては多くの中国人が、飲むことによって強くエネルギッシュになれると信じていた。中国にはいまだにこの薬を探し求める人が、特に年配の富裕層に多いという。そして、その需要を満たすために政府省庁がトラ・パークを設立したのだという。
最近まで中国北部にはアムールトラがあふれていたとレブンワースは言う。「伝統的に、地元の人たちはトラを殺してその骨から虎骨酒を造っていました。そのうち、トラを飼育できればもっと骨が手に入り、もっと虎骨酒を造ることができると気が付いた人がいたんですね」
政府はトラ・ファームにより野生のトラに対する狩猟圧力が軽減されると主張するが、実際にはその逆の効果が見られると言う。
「明らかにここは虎骨酒のサプライチェーンに組み込まれているんです」と、レブンワース。「政府は今は認めないでしょうけどね。しかもおそらく、パークの遺伝子プールを向上させるために今でもトラを狩ったり罠にかけたりしているはずです」
さらにつけ加えて言うには、「真の目利きと言われる人たちは、野生のトラの部位や虎骨酒を欲しがります。したがって、この取引全体が野生のトラ狩りの需要を高める結果になっています」
レブンワースによると、このニュースに関する良いことは、中国人、特に若者たちが動物を利用することに以前よりも懸念を抱くようになったことだという。また、中国政府は、絶滅危惧種を守るための法律を施行しないことで悪評を買っていることに気が付いているという。
この春、全国人民代表大会の委員会が、保護対象になっているすべての動物の消費を取り締まる法律の強化に動き出した。
レブンワースはこれを大きな一歩と称したが、まだ中国に生息している少数のアムールトラの運命を変えるには十分なものではないと言う。
「中国では、動物の快適な暮らしに関する真に包括的な法律が議論されています」と、彼は話した。「しかし、事態の進展はきわめてゆっくりです。中国の野生のトラにとってはおそらく十分な速さではないでしょう」
【翻訳協力】木田直子
【JTEFコメント】
数年前にハルビンに行く友人に、このトラ・ファームの写真を撮ってきてもらいました。多くの虎骨がお酒に漬かっている写真の隣には虎骨酒が違法に販売されていました。中国政府がトラの保全に向かっていると言いますが、CITESでこのファームでの虎骨の取引の合法化を将来的に求める可能性を明示しています。養殖より野生が効果があるという需要者側の意見は、日本の薬草にも鮎などの魚についてもよく言われていることです。野生個体への影響は避けられないでしょう。