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密猟反対の決意を示そうとチベットアンテロープの毛皮を処分する中国

新華社通信、2009年10月23日

中国・青梅(チンハイ)省にある動物保護当局は木曜日、希少種の殺害反対の決意を示すため、密猟者から押収した2,282頭分のチベットアンテロープの毛皮を処分した。

「処分した毛皮は、過去10年間に密猟者から押収したものである」と、Hoh Xil自然保護管理局のCedain Zhou局長は述べた。「我々は、密猟と戦うという断固たる姿勢を示したい。」

今回の動きは、中国が当該地域で武装した密猟者への取り締まりを厳しくした1998年以降では最大規模であると、同氏は述べた。

過去10年間に、4,000頭分以上のチベットアンテロープの毛皮が当局によって押収されている。

チベットアンテロープからは、ペルシャ語で「キング・オブ・ウール」の意味をもつシャトーシュという世界でも最高級の毛織物がつくられるため、密猟者の標的となった。

チベットアンテロープの背部の毛は、人間の平均的な髪のおよそ6分の1の細さである。

シャトーシュのショールは驚くほど軽くて暖かく、チベットアンテロープ3~4頭分の毛から1つのショールがつくられ、世界市場で99万円(11,000ドル/1ドル=90円 12月15日現在)もの値がつけられる。

1980年代後半になると、シャトーシュのショールはヨーロッパとアメリカで最先端のファッションとなり、闇市場に多く出回ったために、200,000頭いたチベットアンテロープは1997年には20,000頭にまで激減した。

チベットアンテロープの狩猟とシャトーシュの販売は固く禁止されたが、Hoh Xilでは今でも密猟が頻繁に行われている。

チベットアンテロープの大量虐殺をくい止め絶滅の危機から救うため、中国政府は1995年にHoh Xil自然保護区をつくり、1997年には同区を国定の保護区とした。

高度平均4,600メートルの場所にある青梅チベット高原奥地の45,000平方キロメートルが自然保護区に指定されている。

国の密猟対策により、Hoh Xilでは2006年以降に武装した密猟者の報告は無い。また、同地域でのチベットアンテロープの数もおよそ60,000頭にまで増えたと、Zhou所長は述べた。

「違法取引やチベットアンテロープの毛皮の消費が続く限り、この生物の保護には長い時間がかかるだろう」と、同氏は述べた。

1979年以降、チベットアンテロープは国連のワシントン条約の下で最高レベルの保護を受けており、1988年以降は最も絶滅の危機にある生物として中国政府に指定されている。
(翻訳協力 松村理沙)

【JTEFのコメント】
チベットアンテロープで作られたシャトゥーシュショールは、いまだにブラックマーケットでは高値で取引されています。JTEFのパートナーNGOインド野生生物トラスト(WTI)では、カシミールでシャトゥーシュを編んでいた職人に、代替職としてシャトゥーシュの代わりに最高質のパシュミナを編む機会を与え、インド国内で販売しています。

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