世界のニュース

野生動物・保全問題のニュース & JTEFのコメント

オランウータン、タイで押収される 屈辱的なオランウータンの取り扱い

タイ野生生物友好基金 Edwin Wiek、2011年03月12日

インドネシア政府は、タイで押収されたオランウータン12頭をタイのバンコク郊外の商業施設である動物園へ寄贈することを決定した。

この12頭のオランウータンは、2008年と2009年にタイ野生動物友好基金(WFFT)の申し立てで押収されたもので、インドネシアから密輸され、タイ国内のチュンポーンとプーケットの動物園に観光客への見世物とするために送られた。数カ月間に渡りWFFTがタイ当局に対して、抗議をしたり、圧力をかけたりした結果、タイ警察がチュンポーン動物園を捜索し、63頭の保護動物を発見した。その中に2歳程度のオランウータン1頭が含まれていた。タイ警察は、それらの動物はそのまま動物園で飼育することを許したが、4週間にわたり抗議活動を行った結果、それらの動物が当局に渡ることとなった。

WFFTは、プーケットのトラ・ワニ動物園で11頭のオランウータンを見つけたが、それらは2009年1月に行われた捜索では見つけられなかった。しかし捜索の1ヶ月後、11頭のオランウータンが地元の道端で、「飼い主がいない動物」として当局に押収された。WFFTは、2つの動物園の代表者を起訴し、動物園の認可取り消しを求める活動を起こした。そして、押収された動物をインドネシアに戻すか、適切な場所へ移すことを求めたが、その要求はいずれも取り上げられなかった。

2月28日にタイの国立公園・野生生物局高官とインドネシア政府が会談し、その場で、インドネシア政府がオランウータンの受け取りを拒否し、理由としてオランウータンを適切に扱うことができないと述べたという報告をWFFTは受けた。

インドネシアの林業省と在バンコクのインドネシア大使館は、12頭のオランウータンを観光地で有名なサムットプラカーンへ移すようタイ国立公園・野生生物局へ依頼した。サムットプラカーンには、不正に輸入され、2003年に押収されたオランウータン5頭が飼育されている。WFFTは、在バンコクインドネシア大使館に対して、すぐにでも引き渡されたオランウータンの状態を把握したい旨を述べた。林業省は、政府のこの決定理由についてのWFFTの質問にまだ回答をしていない。

オランウータンは、インドネシアとマレーシア固有の動物だが、多くのオランウータンがアジアの国々に密輸されている。というのも、オランウータンは高い知能をもつために、観光客との写真撮影やボクシングの訓練などが容易なためだ。7年前からWFFTは、タイやベトナムで90頭のオランウータン押収にかかわり、うち57頭を元の生息地へ返還させた。タイの闇マーケットで、若いオランウータンは15万バーツから25万バーツ(約41万円~68万円 2011/3/31現在)で取引されている。
(翻訳協力 平野容子)

【JTEFのコメント】2011年4月
オランウータンは 生息地破壊とペット目的の密猟のために深刻な絶滅の危機にあります。いったん人の手で飼育されたオランウータンを野生復帰させることは非常に困難です。インドネシアで野生復帰の取組みも行なわれていますが、本当の野生復帰はほとんど実現していません。人の手にかかったオランウータンは、どのような病気に感染しているかわかりません。また、出身地がわからずどこへ返せばよいか判断するのが困難です。その結果、もとの生息地や野生のオランウータンとは隔離された場所に放すしかなくなります。とにかく、密猟が繰り返されないよう、違法取引にかかわった個人や動物園を徹底的に取締り、厳しく処罰すべきです。そうでなければ、商業施設で人間にこびる本来の姿を失ったオランウータンしか地球上にいなくなってしまいます。


現地パートナーリンク集リンクのお願いお問い合わせ個人情報保護方針