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矛盾する日本の保護活動

Inter Press Service 2013年07月18日

日本の野生生物保護に対する考え方をついた記事。日本が世界のマグロ漁獲量の80%を占めるなか、大西洋クロマグロの個体数は枯渇した。莫大な利益を生む産業に譲歩と野生動物保護の獲得を目指す保護活動家たちの闘い。

7月18日 東京(IPS) - 絶滅危惧種に指定されているイリオモテヤマネコは、日本の南に位置する沖縄県の西表島という小さな島に生息し、まだら模様の体に用心深い気質の野生動物である。その保護に向けた取り組みは見習うべきモデルとして高く評価されているが、危機的生物の保護に対する政府の対応には一貫性が無く、何十年も野生生物の保護活動家を失望させ続けている。

政府機関、NGO、地元の団体など様々な機関が前例のない連携を取ることで、イリオモテヤマネコの個体数の減少に歯止めがかかりつつある。専門家によると、10年ほど前にはおよそ300匹と推定されていた個体数が、現在では100匹を数えるほどにまで減っているという。

この小高い亜熱帯の島に生息し続けているイリオモテヤマネコだが、インフラ整備や農地やサトウキビ畑の拡大によってその住処が奪われてきた。さらに、この住処を蛇行するように作られた大きな道路では、スピードを出して走る車によって彼らの命が奪われることもある。

2年前に始まった取り組みでは、様々な技術や公的資源、それに地元の人々の知識を取り入れることで、イリオモテヤマネコの保護において大きな役割を果たしている。

取り組みの具体的な内容としては、農業や漁業を営む地元住民を対象とした野生生物の認識を広める活動や、道路を渡ろうとする動物が安全に歩くためのトンネルの建設、それに野生動物を観察する人気の観光ツアーなどがある。

野生生物の違法取引の抑制や日本国内における野生生物やその関連製品の需要軽減に取り組むNPO、トラ・ゾウ保護基金の戸川久美氏は、「イリオモテヤマネコの個体数減少の“原因”となっているのは、自然現象ではなく西表島での経済開発です」と説明した。

同氏によると、西表島の2,500人の島民の最近の保護活動への認識と敬意の気持ちには向上が見られるのではないかという。
「島の固有生物を護らなければ、自分たちの持つ文化的アイデンティティの核となる部分が失われてしまう、というのが多くの地元住民に共有されている意見だと思います」と、同氏は述べた。

ボランティアで保護活動を行っている村田 行さんは、スピードを出して走る車と夜行性の動物が衝突しないよう車で夜間のパトロールを行っている。村田さんによると、地元住民は「イリオモテヤマネコを絶滅の危機から救うという一つの目的のために、政府や保護活動の専門家らと手を結んだ」という。

村田さんは過去2年の間に、自分自身少なくとも10匹の子猫と遭遇し、危険な道路から離れさせた。

イリオモテヤマネコを西表島の象徴にしようという啓発活動が実現に向け大きく前進している。子供たちの強い働きかけに大人たちが動かされつつあるのだ。

沖縄列島は生物の多様性に富んでおり、日本で最も希少性の高い野生生物が生息している。このことから、現在では守るべき自然遺産の一部であると認識されるようになっている。

今年3月、日本はこれまで目を向けてこなかったリュウキュウヤマガメを、国際的な強制力を持つワシントン条約(CITES)の附属書IIに載せるという前例のない措置を取った。

リュウキュウヤマガメは日本南部の火山の島々からなる琉球諸島に生息する固有種であり、1970年代に国の“天然記念物”に指定された。これ以降、文化庁長官の明確な承認が無い限りは日本国内におけるリュウキュウヤマガメの販売や捕獲、移動させることが禁止された。

しかし、この措置では外国人による取引を防ぐことはできず、近年では中国本土や香港、さらに様々なウェブサイト上でもリュウキュウヤマガメが取引されていた。これを受けて日本はワシントン条約への提言に踏み切った。1億2,780万人の人口を持つこの国では初めての事だった。

「リュウキュウヤマガメを附属書に載せる提言は、日本にとって小さくとも重要な一歩となる」と、野生生物をモニタリングしているTRAFFICでシニアプログラムオフィサーを務めるカナリ カホリ氏は述べた。同氏は先日、アジアにおけるリュウキュウヤマガメの違法取引を証明する報告書を共同で発表している。

新たな保護活動のモデルとして日本が示したもう一つのロードマップが、先日発表された生物多様性国家戦略2012-2020である。2010年10月の生物多様性条約の締約国が集まる生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された愛知目標と並行して進めることを国家目標としており、環境保護に向けた地域のサポートの促進も含まれている。

日本の環境省で野生生物取引を担当するアラマキ マリサ氏はIPSに対し、「数十年にわたり破壊されてきた生物多様性の保護に向け、国内法の強化に懸命に取り組んでいる」と述べた。

その破壊された生物多様性の代表例がニホンカワウソである。ニホンカワウソは、10年以上も川や本来の生息地で発見されなかったため、2012年に公式に絶滅が確認された。

採鉱やその他の産業によって日本の川が汚染されたことが絶滅の主な原因だとアラマキ氏は述べている。同氏はこのニホンカワウソの消失を、絶滅の危険がある野生生物の持続的な保護の仕組み作りについて地域社会との協力の必要性を訴える「厳しい警告」と称した。

問題となっているクジラ
保護活動家らは変化が起きていることに喜びつつも、散発的な打開策では長い闘いに終わりが見えないことを痛切に感じている。

野生生物保護の将来が楽観視するにはほど遠いと最近実感したのは7月17日のことだ。南極周辺の南洋で行われている日本の捕鯨に対するオーストラリア-日本間の訴訟に伴いハーグの国際司法裁判所(ICJ)で開かれていた公聴会が終了したのだ。

先月オーストラリア政府によって申し立てが行われた今回の訴訟では、日本が「調査目的」として1ヶ月に1,000頭のミンククジラを捕獲している「研究用調査捕鯨」が争点となっている。

欧米の動物愛護団体は、日本が調査と見せかけて商業目的の捕鯨を行っているとして非難を続けている。実際に、捕えたクジラの肉がいわゆる調査の後間もなくして日本国内の市場に出回っているため、非難の声は強まっている。

日本の捕鯨産業に詳しい東北大学の石井 敦准教授は、IPSに対し「捕鯨をめぐる環境保護に取り組む上で常に直面するのが、莫大な利益である」と述べた。

調べたところ、一度の捕鯨に1,000万ドル(9億8,200万円/2013年8月14日)の補助金が国から支払われている。かなり高額だが、捕鯨は科学的データの収集に必要なだけでなく、守るべき重要な日本の伝統でもあると政府は主張している。

大西洋クロマグロは日本の大事な国民食である寿司のネタとして広く使用されているが、その漁をすることで保護活動家との国際的な対立が生まれている。保護活動家による懸命な働きかけによって乱獲を規制する条件が設けられ、大西洋クロマグロの個体数は枯渇した。

日本が世界の漁獲量の80%を占めるクロマグロは、個体数が減り続け1975年の17%にまで落ち込んでいる。ここでも保護活動家の前には利益という壁が立ちはだかっている。高級レストランではクロマグロの一番上等な部位を1切れ当たりおよそ14ドル(1,374円/2013年8月14日レート)で販売しているのだ。一方で、今年1月に東京で行われた競りでは、489ポンドのクロマグロ1匹が史上最高記録となる180万ドル(1億7,667万円/2013年8月14日レート)で競り落とされた。

莫大な利益を生み出す鉱業の問題に取り組む保護活動家も同様の問題を抱えている。この産業では、2017年までに35億9,000万ドル(3,531億8,420万円/2013年8月14日レート)もの利益を見込んでいるのだ。

活動家らは、絶滅の危険がある日本の野生動物への譲歩と保護の獲得を目指し、このような矛盾の解消に向けて長く続く闘いに臨む。
【翻訳協力】 松村理沙

【JTEFのコメント 2013年9月】

この記事では、西表島にしか生息していない国の天然記念物、イリオモテヤマネコの保護活動の紹介に始まっていますが、日本の野生動物保護の考え方をつこうとしています。
マグロも、この記事には出てきませんが最近話題になっているウナギは日本人が好む食材で、食べられなくなってしまったら…という観点からのニュースがテレビや新聞でにぎわいました。クジラの需要は昔と違って今はほとんどないので、マグロの問題とは違いますが、日本人が世界中のマグロもウナギも食べつくしつつある人類の中心にいることは確かです。昔のように、高級食材のまま、安く食べるのではなく、晴れの日に食べるものという感覚を日本人が今ももっていて、安値大量消費のビジネスに乗らなければ、ここまで種の存続を脅かすことにはならなかったのではないでしょうか。




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