イリオモテヤマネコ生息地保全プロジェクト
【プロジェクトの背景】
イリオモテヤマネコの生息密度が高いと考えられている場所は標高200m以下(とくに50m以下)の低地部分です。ところが、2008年の琉球大学による調査で、近年、その低地部で環境の劣化・攪乱が原因と考えられる生息数の減少が起こっていることが明らかになりました。生息地が小さな島であるという宿命からもともと数が少ない上、減少傾向にある個体群を保全するためには、生息状況が安定している生息地は現状維持、不安定なところは回復をめざすべきです。ある場所の環境が改変された場合、その影響は、その場所が利用できなくなることだけにとどまりません。その場所を通ることさえままならなくなった場合、周囲の生息地が分断されて互いの行き来が失われるおそれがあります。孤立した小グループは、それぞれが消滅のリスクが高くなります。さらに、遺伝的な交流が乏しくなることは、長期的な存続を難しくします。西表島ではこの数年間だけでも、将来のリゾート開発を推測させる大規模な土地取引や土地の現状変更が起きています。また、農業経営の効率化のために農地を造成する土地改良事業の計画もあります。
イリオモテヤマネコの生息地に対する悪影響を防ぐためには、土地利用に当たって避けるべきこと、影響緩和のためになすべきこと等、科学的知見に基づく配慮事項を、関係機関が可能な限り早期に実施することが重要です。
【プロジェクトの内容】
1. 科学的調査に基づく生息地保全のための配慮事項の検討
西表島の低地部を細かく区分し、それぞれの区域がイリオモテヤマネコにとってどのような重要性をもっているかを科学的に明らかにします。
また、各区域における人間による土地利用状況、将来の土地利用計画を把握し、生息地に対する影響を予測します。
その上で、ある土地利用計画が想定されている場合にはその計画において、それがない場合は全般的な土地利用について、実施すべき配慮事項を示します。
2011年1月には、この点に関する網羅的は報告書を公表し、関係機関に提出しました。
この科学的調査は、西表島全体について継続的に行っていきます。また、特に問題の大きい区域(ホットスポット)については特別な調査を行うこともあります。
2. 政策提言
環境省、林野庁、沖縄県、竹富町などの関係機関に対して、配慮事項の実現のため、継続的に情報提供、提言を行います。