ワシントン条約と野生生物犯罪
「野生生物犯罪」は、世界の野生動植物種を、国内法あるいは国際法に違反して捕獲し、取引しあるいは所持する行為であるとされている(国際刑事警察機構 野生生物犯罪作業部会による定義)。野生生物製品が、銃、薬物と共にブラックマーケットの3大商品といわれ、国際シンジケートの資金源となっているため、国際刑事警察機構などを中心に対策が講じられるようになった。野生生物犯罪がもたらす最大の悪は生物多様性の喪失である。長期的に見れば、その被害が人間にとっても甚大であることは言うまでもない。しかし、個々の犯罪の直接の犠牲者は人間ではなく野生生物である。そのためか、各国政府や世論の強い関心を集めにくいという面ももっている。その結果、人々の関心が払われにくく、意識されたときには種の絶滅を目前に迫っているということになりかねない。
日本は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」の規制に基づいて許可された輸入について、種ごとの輸入国トップ3のリストに頻繁に登場する国の一つである。しかし、この許可取引の背後に潜む違法取引の実態を詳細に検討した研究例はほとんど存在しない。JTEFは、入手可能な行政文書、報道記事、公判の傍聴メモを収集整理し、2003-2008年の期間のワシントン条約にかかわる野生生物犯罪をデータベース化するプロジェクト"JUSTICE"(ジャスティス)を実施した。
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